渡邉ホマレ

ウエスト・サイド・ストーリーの渡邉ホマレのレビュー・感想・評価

4.8
「なんで今更…?しかもスピルバーグが?」と企画発表時から思い続けてきた本作。
だがやっぱりスピルバーグはすごかった!

「ミュージカル映画」って、「ミュージカルの舞台を映画で再現するもの」という何となくの固定観念のようなものが自分の中にはあったような気がするのだけれど、本作は「ミュージカルを映画化」している…上手く表現できているかは分からないが、オープニングがそれを物語っていると思う。

…まるで『プライベート・ライアン』の後半かよ…と思うような、ボロッボロの大地を移動する、バッキバキのカメラ。まだ何も起きてはいないのに、もう…バッキバキ!

「ミュージカルがニガテで…」という私を含めたほとんどの人は、「音楽流れると話が止まっちゃうじゃないですか〜」と言いがちだと思うのだけれども、本作はその「音楽が流れる」こそが楽しくて、その場面こそが物語そのものだ。
…というのは前回だってその通りではあったのだけれど、例のバッキバキのカメラと、とんでもなくクリアな照明技術、演出でもって、出演者全員の一挙手一投足から目が離せなくなる。動きの情報量が多過ぎて初見では捉えきられないので、もう一度観たくなる。「マンボ」なんかはその極みだと思う。

そして「なんで今更…?しかもスピルバーグが?」…というギモンは、後半、終盤にかけて完全に解消される。

「ロミオとジュリエット」がベースにあるので…というかあまりにも有名な作品だから、どんな話かは分かりきっているのだけど、その後半から終盤が訪れると、自然と「どうしてわかりあえないんだよォ…」と心の中がハラハラしてくる。結果は分かってるのに、なんか…今回は上手く和解できるんじゃないかなァ……なんて馬鹿なことを思ってしまう。

「今回はジョーカーが勝つんじゃないかな…」と『ダークナイト』を繰り返し観るような感覚だ。

全然詳しくないけれど、同じお話のミュージカルが何故何度も上演されて、そのたびにミュージカルファンが足を運ぶのか、同じ噺を演じるだけなのに、なぜ落語はオモチロいのか…そんなことを映画で知るという…なんだ、やっぱすげぇなスピルバーグ!

パンフレットは一見お高めに感じるかもしれないけれど、内容超充実で寧ろお値打ち価格。買っとけ。