答えを求めているじゃなくて、
本当は答えを求められたい。
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これはTV用に作られたハル・ハートリー作品。これを流すって、なんて素敵なブラウン管なんだろう。少しだけ遠い(もう近くはない)時代と場所に思いを馳せる。
作品の主題は前半ヒロインのメアリーウォードによって明示される。
「あなたの授業はaskばかり。でもそのおかげで道筋が見える」
教師と生徒の密かな恋情は、全てがパチッと合わさっていく。
本屋での言葉のつかみ合い、取り留めのない電話、深夜のカウンターバー。
でもハルハートリーの哲学は、そんな緩慢な性愛だけでは許さない。
彼は作品の主題かと思われた「ask」に唐突に疑問符を突きつける。
道行く人々に求婚する(ask)ホームレス女は、つかぬまのマリッジブルーの最中、激しい主人公の問い掛けにこう答える。
「本当は求婚されたかっただけなの」
その瞬間、主人公のaskという授業・恋愛・はたまた人生の姿勢が一気にひっくり返されてしまう。
自分は誰かに答えを求めていたいんじゃなくて、
本当は答えを求められたかっただけなんじゃないか。
「じゃあHeをSheに変えたら?」
という言葉の裡の意味を変わってくる。
本心は時に主体を逆転させてしまう。
自暴自棄の中、道を尋ねられハッとするドノヴァン。
書店員として「Can I help you?(何かお探しですか?)」と虚ろな目で延々と聞き続けるメアリーウォード。
askが要求する客体は果たして孤独を埋め合わせられるんだろうか?
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哲学的詩的な会話の応酬、
ポストエモロックの演奏、
ゴダールとシンプルメンのようなダンスシーン。
そしてメアリーウォードの愛らしさ。
それだけで、
ずっと見ていられるような心地だった。