Ricola

私、オルガ・ヘプナロヴァーのRicolaのレビュー・感想・評価

3.6
チェコスロバキアで実際に存在した、最後の女性死刑囚のオルガ・ヘプナロヴァーの人生を元にしているという作品。
彼女は自分の周囲の人間に失望し、社会に対する恨みと絶望をつのらせていき、ついにそれを行動化してしまう。

オルガの悲しみや怒りを、周りの人たちはもちろん、自分自身でも制御しきれず理解しきれなかったのだろう。
オルガの不器用さで片付けていいのかわからない、社会での生きづらさは、彼女自身の手によって復讐という形で最終的に表出されてしまったのだ。


冒頭すぐの長い沈黙の、「静止」したロングショットが怖い。裕福な家庭で育ったはずのオルガであるが、彼女はずっと不機嫌で家族も彼女とどう向き合えばよいのかわからず諦めてしまっていることがすでに伝わってくる。

オルガはひとり暮らしを始めてからタバコを吸うことを覚える。孤独を埋めるように、無駄なことを考えないようにするために。
虚ろな目で、憎しみを募らせた鋭い眼光で、ときに悲しそうに…。
タバコの吸い殻が徐々に伸び、それがポトッと落ちたのは、オルガの感情が高まって何かが切れた音である。

手前に飲み物が置いてあるテーブルが映り、
その奥にオルガを含めた何人かの人が映るという構図のショットが、何度かうかがえる。オルガの内向性はもちろんだが、彼女への抑圧をも感じられる。

家族からも愛する人からも見捨てられ、社会にもうまく適応できず自暴自棄になったオルガ。
しかしこの作品では、オルガの内面が暴かれたり想像によって書き換えられるといった、さらなる彼女への暴力が加えられることはなく、オルガを観察する姿勢が徹底されていたように感じた。
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