RYUYA

私、オルガ・ヘプナロヴァーのRYUYAのレビュー・感想・評価

4.5
22歳の女が電車待ちの列にトラックで突っ込み8人が死亡。73年、プラハで実際に起きたこの事件。そこに至るまでの彼女、オルガの疎外感に塗れた人生を描くモノクロ作品。これ、監督の寄り添い方と突き放し方がとにかく絶妙だった。言いたくないけど今で言う「無敵の人(なんか強そうだからこの言葉大っ嫌い)」を描いていて、彼女の社会的な弱さ、家庭環境、性的な苦悩に同情の余地は与えるけど、最終的には「殺人犯なんかには同情も容赦もしない」みたいな姿勢が見てとれる。それは圧倒的に正しいけど、キャラクターを作って動かして映像を作る人からしたらなかなか出来ることじゃない描き方だと思う。愛着って、どうしても生まれてしまうし。

また、無差別殺傷犯の「全部どうでもよくなってやった」とか会社とか家族とか恋人とかへの恨みや失望みたいな、自分本位の自供ってのが映画、あるいは現実でも常套句になっているけど、本作はそこも違った。オルガは「今後、私みたいな人が出てこないようにするためにやった」と言っていた。

フレコミの引力でなんとなく観に行ったけど、コントラスト薄めのモノクロ、音楽一切なし、過度な省略と、全体的には睡魔勧誘系の映画で、主演役者の顔の魔力、エヴァみたいな歩き方、佇まいでギリ画がもっていたくらいのモンと思っていたけど、そこが、それを言うシーンがまるで体を突き抜けるように刺さったんだよなぁ。完璧な映画なんかより、一生忘れないであろうワンシーンが、一言がある映画の方が尊いのかもしれませんね...。
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