十一

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンの十一のレビュー・感想・評価

4.1
長いが、邪悪の凡庸さを描くには必要な尺ではある。邪悪が為されることに明確な悪意はなく、ただひたすらにありきたりのエゴイズムが積み重なっていく。歴史の厚みと過ちというのは、詰まるところ、その瞬間において極めて凡庸な人間性の積み重ねに他ならない。より長い歴史のスパンにおいて俯瞰した時にのみ、個人の愚かさは浮かび上がる。富を手に入れ、西洋文化の侵略を夫という象徴的な存在を受け入れつつあった妻が、その死の淵で祖霊の神秘に近づく描写が、開拓後のアメリカという浅い歴史の営みを俯瞰する神の視線と重なる構造に、歴史を映画で語ることの真髄を見る。
十一

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