TaichiShiraishi

108~海馬五郎の復讐と冒険~のTaichiShiraishiのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

松尾スズキの最新作はジャンル分けしにくい怪作に仕上がっていた。

FBにダサいコンテンポラリーダンサーへの思いというか劣情を綴っていた妻の裏切りが許せず、投稿についていた108のイイネの数だけ女を抱いて復讐を果たそうとする脚本家海場五郎の物語。

ただのエロ映画になってしまいそうなところを、強烈な描写の数々や不謹慎ギャグ、そして普通の邦画とはかなり路線の違う独特のキャスティングの妙で、しっかりエンタメに仕上げていた。松尾スズキの表情やそもそもの顔がそう見えるのかもしれないが、女を抱いていても受身で状況に流されているように見える主人公像が面白く、嫌な感じがしない。

主人公は過去に映画監督もやった脚本家兼コラムニストということで完全に松尾スズキ本人の投影だろうが、いったい何があったんだろうか。

濡れ場が最初は普通で徐々に異常すぎる世界にシフトしていくのがスムーズでいつの間にか「あれ? なんで今こんなものを見させられているんだ」と困惑していた。個人的には金玉無くなっちゃう人と死体触っている人がツボでした笑。

終盤に出てくる“女の海”の光景は、金さえ積めば普通に実現できそうなことながら異常性が際立つ。照明が完全に明るい場面であんまり幻想的な雰囲気で撮っていない身も蓋もない感じが斬新だった。

元女優で「このまま老いていくのが怖い」といって冒険しようとする妻役が中山美穂というのも皮肉なキャスティング。ほかのキャスティングもLiLiCoと栗原類が親子とか独特すぎる笑。

また主人公に妻の裏切りを教える女優志望の少女・美月を演じた堀田真由の小悪魔演技もなかなか良かった。彼女と松尾スズキの濡れ場もあれば文句なしだったがさすがに無理だったか。
代わりにリバーズエッジでも見事な脱ぎっぷりだった土居さんがしっかり脱いでくれたけどあんまりありがたみはない。
メフィストのような存在から口実をもらい暴走していく主人公。タイトルにも冒険と入っているし。

思い返すと冒頭から自身が書いた芝居のオーディションの審査員をしているが、彼は心ここにあらずで、PCを見て締切まじかのコラムを書いている。

おまけに全力で歌い踊った女性に対して「正直困惑したし不愉快だった。振り付け考えたの彼氏でしょ。いますぐそのクソダサい彼氏とは縁を切ったほうがいい」と辛辣にコメントする始末。明らかにイライラ溜まってますな。

それに海馬のマネージャーは彼が原稿を落としそうになると「落としますか? 男らしく、破滅的に」と何度もささやきかけてくるが、その『男らしく、破滅的に』羽目を外すことが本当は元々の主人公の願望だったのではと思ってしまう。

結局男って馬鹿だなと思いつつ、彼が日常に戻るのかこのまま破滅するのか岐路に立たされたところで終わるラストは味わい深かった。女の島にあのまま行くんだろうか。

それにしてもやっぱ妻の不貞がFBの書き込みだけってちょっと弱いけどね。

ちなみに往年の中山美穂ファンの方に言っておきますが、彼女はそこまで登場しないうえに対して脱いでもくれないので、そこは期待しない方がいいと思います(笑)。
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