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お嬢ちゃんの8637のレビュー・感想・評価

お嬢ちゃん(2018年製作の映画)
3.5
2回目。

130分間、壮大な「何の話だよ!」。だが適当に作られているのではなく、それに引き込まれて脳内でバックグラウンドが創られていく。知能の低い輩がこういうのを喋ってるとかよくあるわ...と考えていると、みのりは果たして"賢い"と"無能"のどちらに部類されていた人間なんだろうかと気になった。
そう、これは邦画史に誕生した"賛否両論ヒロイン"の物語。その見た目と喧嘩口調が引き起こす相違は、もはや哀愁を残す。

糞同然の会話群から浮かび上がるテーマは"容姿"。自分が言える事では絶対ないけど、結局人は見た目が100パーセントなのだ。可愛ければどうせ皆寄ってくる。優しく振る舞っただけでは誰も振り向いてくれない。その決まり切った世界を生きていくしかない。これは言い過ぎではないと思う。
振り返ってみると、全ての暴力・険悪・閑静は容姿による対立から始まっていた。3組の男3人組がその象徴だった。「あのカフェ、可愛い店員いるから行こうぜ」とか。カフェの人たちも、完全にみのりの容姿で支えられている関係性じゃん。

そんな人間の当たり前な愚かさが、今や引っ張りだこの撮影監督・四宮秀俊氏の手持ちカメラも相まって、露わになっていく。
親がつけた名前に込められた愛情から断絶して生きる子どもたち。誰かに怒られても開き直ってしまう。悔しいことがあっても酒で自分勝手に忘れてしまう。純愛にできたものを、性的搾取に変えてしまう。都合が悪くなって話の途中に相手に逃げられてしまった悔しさ、よく分かる。

ラスト2シーンが、現実とは思えないほどの恐怖。萩原みのりのあの眼力で訴えかけられたら、もはや僕は何もできないだろう。
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