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惡の華のdaiのレビュー・感想・評価

惡の華(2019年製作の映画)
3.9
原作は既読。
押見修造は好きな漫画家の一人である。

伊藤健太郎扮する春日は、同じクラスの清楚系女子の佐伯さんに恋をしていた。ある日、愛読書であるボードレールの『惡の華』を学校に忘れてしまい、それを取りに行った際、偶然にも佐伯さんの体操着が床に落ちているのを発見してしまう。つい衝動で手に取った矢先、物音にビビり、そのまま家に持ち帰ってしまう。その一連の行動を玉城ティナ扮する仲村に目撃されていたため、春日は仲村と契約を結ぶこととなる。
春日は佐伯さんとの関係が好転していく中、仲村の存在が付きまとう自分に気づく。

思春期特有のモラトリアムな感じが見事に描かれていた。自分が平凡であることを認めることは大人への一歩であるのだが、その一歩が踏み出せない若者は多い。私も人から「つまんない」と思われたくなく、必死に魅力ある男になろうとした時期があったように思う。変態の方がなぜかカッコいいと思うこともあった。

ボードレールが好きなんじゃなくて、ボードレールを読んでる自分が好き。ナルシストという言葉では説明できない自己愛とその裏側にある自己顕示欲。誰もが抱える承認欲求やアイデンティティー自分とは何かーといった、生きる上で課せられる難題を、とても上手に映像化していたように思う。

佐伯さん役の秋田汐梨さんがとても良かった。清楚で透明感があり、佐伯さん役がピッタリだった。

劇場を出る際、若い女性二人組が「全然意味わかんなかったし、長かった」と言っていた。全く刺さらない人には刺さらない映画なのだろう。
dai

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