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Indian Horse(原題)のGreenTのレビュー・感想・評価

Indian Horse(原題)(2017年製作の映画)
2.5
カナダの先住民族(ネイティブ・アメリカン)の男の子の半生を描いた映画です。

民族浄化のためにカナダ政府は、ネイティブ・アメリカンの子供たちを無理やりキリスト教の寄宿学校に入学させていた。6歳のサウルは家族と共に北へと逃げるが、捕まって寄宿舎に入れられてしまう。寄宿舎では虐待まがいのしつけが行われていたが、生徒に優しいクイニー牧師は、男の子たちにアイスホッケーを教えてくれるようになり、つらい現実を忘れさせてくれるホッケーにサウルは夢中になっていく。

この映画のポスターを見ると、ネイティブ・アメリカンの男の子がアイスホッケーをやる映画だと思っていたので、冒頭キャプションで「1800年から1900年の間に、カナダ政府は、ネイティブ・アメリカンの子供たちを無理やりキリスト教の寄宿学校に入学させていた・・・」と出たので、「あ!そういう映画なのか!」と興味を持って観始めました。つい最近、ニュースで、こういう寄宿学校跡地でたくさんのネイティブ・アメリカンの子供たちの遺体が見つかったニュースを見たばかりだったので。

しかし、寄宿舎学校のシーンは3分の一もなくて、サウルがホッケーの才能を発揮してネイティブ・アメリカンのチームにスカウトされ、寄宿舎学校から出て新しい家族と暮らすことができるようになり、次にはトロントのセミプロにスカウトされ、スターになっていく・・・・という風に「サウルの成功物語」の体になっていく。

そしてそのあと、人種差別で孤独を感じ、ホッケーを辞めてしまうんだけど、新しい家族のところにも戻れず、放浪してアル中になり・・・のような、結局サウルの半生の物語になっていく。

サウルの個人的な物語は、あまりにもありきたりな話であまり興味がわかない。ホッケーでスターになったのに、それでも差別されて・・・みたいのはわかるけど、プロとかでやっていく人は必ずいじめられたり壁にぶち当たったりするので、「ネイティブ・アメリカンの人の独自の経験」としてはすごく弱い。

サウルの役は、年齢ごとに違う人が演じていて、みんな多分ネイティブ・アメリカンの役者さんたちなので応援したいのはやまやまなんだけど、一番小さい時の子以外はあまりいい役者さんでもなかった。もともと無口な感じで、あんまりしゃべらないし感情も出さないし、脚本自体もあまり面白いものでもない。

最初と最後にキャプションで寄宿舎学校で民族浄化が行われていたと出しているんだから、寄宿舎学校のことをサウルの目で描くという目線に絞るべきだったのに、サウルの成長物語に焦点を当てて、寄宿舎学校のことは背景になってしまったのでパンチのない作品になってしまったと思うなあ。

しかし今後も、ネイティブ・アメリカンの人たちの声を届ける映画がたくさん出てきて、しかも進化していく足掛かりになればと思います。
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