にしやん

出国 造られた工作員のにしやんのレビュー・感想・評価

出国 造られた工作員(2018年製作の映画)
2.0
北朝鮮に行ったら、仕事も認められ、家族も良い暮らしができるという勧誘に乗ったためにスパイに仕立て上げられた学者の大生の悲劇を描いた、実話をもとにしたスパイ映画や。

韓国を追われ亡命先の西ドイツで言葉巧みに北朝鮮への移住を勧誘され、学者としての地位とええ生活を夢見て北朝鮮に渡ってみれば、強制的にスパイの訓練をさせられ工作員にさせられてまうっちゅうなんとも恐ろしい話やけど、まあ北朝鮮ならありそうな話やなということで、それなりに納得や。映画ではそのあたりのエピソードは断片的な回想シーンに止めて、北朝鮮のスパイに妻子を人質に取られた主人公のオッサンがなんとかして妻子を取り戻そうと必死に組織に挑んでいく姿をスリリングに描こうとしてるわ。北朝鮮側は妻子を人質にとって主人公のオッサンを操ろうとし、それに対して西側のアメリカCIAと韓国の国家安全企画部はオッサンを泳がせて北のスパイを捕まえるために利用しよということになってしもてて、このオッサン文字通り孤立無援の状態になってるわ。

はっきり言うておもろい作品ではないな。家族を救おうとするオッサンんの健気な姿を描いてはいるけど、もともとはこのオヤジのアホ、それも二重(北朝鮮移住と西ドイツに再亡命)にアホな選択が家族全体を不幸にしてしもたっちゅう悲惨なだけの話やからな。その辺りで、このオッサン自体に最初から共感しにくいわ。南北の対立の中で韓国でマルクス経済勉強し、反政府運動やって、韓国政府の弾圧から西ドイツに逃げて、ほんで騙されたとはいえ一応自分の意志で北朝鮮に移住やろ。行って見たら話がちゃいましたでは全く言い訳にはならんで。一番の犠牲者はアホなオヤジに振り回されて人生台無しになった妻子や。滅茶苦茶可哀想やし、不憫すぎるわ。

映画のほうは実話を基にとはいえ、色々脚色しまくって、スパイもんのスリリングな展開やら家族の美談やら必死にエンタメ作品に持っていこうとしてるわ。前半のオッサンの動きは行き当たりばったりのアホ過ぎで、わし退屈で欠伸ばっかりしててんけど、後半はちょっとは腹を括ったみたいで、たった独りで反撃に打って出るあたりからは少しおもろなってきたかな。勝負の結果はどっちに転ぶか分からんように、それなりのスリルもあったし。ラストやけどちょっとキレイ過ぎるんとちゃう?これはやり過ぎ。どうなんやろ。まあこの辺は実話とは程遠い脚色やろと思ては観てたけどな。

実話のほうやけど、実際はスパイ訓練受けた後、ヨーロッパから留学生を連れて北朝鮮に戻って来いとのミッションを受け、家族は北朝鮮で人質にとられたまま一人でヨーロッパに行ってんけど、そこで自首してしもて、それからは北朝鮮に居る妻と二人の娘の送還のために運動してたみたいやな。奥さんと二人の娘さんのその後はめちゃめちゃ悲惨で、北朝鮮でも最悪と言われるヨドク強制収容所に入れられて、そこで奥さんは亡くなり、二人の娘さんはまだそこにおるらしいわ。

北に行くんを反対してた奥さんは収容所で亡くなり、娘さん二人はいまだに収容所。それで、本人だけが脱北してきたって、やっぱりこのオッサンどうなんやろな。はっきり言うてアカンやろ。やっぱり共感はないわ。
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