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ヴォウィンのkyokoのレビュー・感想・評価

ヴォウィン(2016年製作の映画)
4.2
統治国家が次々と変わる中、ウクライナ人・ポーランド人・ロシア人・ユダヤ人、加えてアルメニア人などの少数派民族が共存していた地域・ヴォウィン(現在はウクライナに属す)。
第一次世界大戦終結後、独立回復を果たしたポーランドにこの地のほとんどが組み入れられたことによって、いままで保たれていた均衡が徐々に崩れはじめた頃、ポーランド娘とウクライナ青年の婚礼の場面から物語が始まる。隣人との間には不穏な空気が漂い、のちの虐殺シーンの布石ともなる場面だ。

第二次世界大戦以降、ヴォウィンの所有国がポーランド→ロシア→ドイツと移っていくにしたがって、ウクライナ人の民族主義思想は過激さを増していく。ロシアによるポーランド人やユダヤ人のシベリア強制移住、ドイツによるユダヤ人虐殺を経て、映画は7月11日のヴォウィン大虐殺でクライマックスを迎えた。

監督は、「誰を理想化することもなく、悪魔とみなすこともない。白黒をはっきりさせる映画を作るのではなく、双方の言い分、考えかたを描こうと努めている」と言っている。ホロコーストやこの2カ月後に起こる「カティンの森事件」などを考えると、ウクライナとポーランドの殺しあいは、ロシアとドイツが因になっていることは明白であり、ポーランドもウクライナもこの二国による被害者であると考えられなくもないけれど、ウクライナ人の目を覆いたくなるような所業はただのサディスト集団にしか見えず、どう考えてもこっちが悪魔だろうと思ってしまう……。

この一連の悲劇を見続けたゾーシャ。ポーランド人である彼女の運命の過酷さにこちらのメンタルがやられそうだった。このラストはゾーシャにとって心穏やかなものであったと思いたい。
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