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サロン・キティ/ナチ女秘密警察 SEX親衛隊のblacknessfallのレビュー・感想・評価

3.5
アマプラはこういうのを落としてくれるのがいいよな。
なんか文芸っぽい格調を纏いながらどエロいポルノを撮らせたら右に出る者がたぶん、数人しかいないティント・ブラス監督のナチスの高官向け慰安施設で繰り広げられる愛憎劇を描いたポルノ映画。

歴史絵巻とハードコア・ポルノ合体させた稀代の怪作『カリギュラ』もそうであるようにブラスの映画はやたらと豪華なのがまず目を惹く。話の鍵になるナチ高官にヘルムート・バーガーでサロン・キティを仕切るマダムがイングリット・チューリン。この二人、ヴィスコンティの『地獄に墜ちた勇者たち』にも出てる名優だよね。普通ポルノなぞ出ないと思うんだけどブラスだから出すことができたのかしら?
ヘルムート・バーガーなんか冷徹で退廃的なナチなんで、まんま『地獄に墜ちた勇者たち』と同じ役なんだよ笑

確かに他のこの手の映画より脚本はしっかりしてる。娼婦として働く女性と客である将校との悲恋、見下しながらその娼婦に惚れるナチ高官との愛憎劇、そこにナチの圧政と腐敗を描きこも演出は本格的な文芸映画の趣がある。
でもさぁ、その深いドラマにガンガン挟み込まれるエロはしょうもないほど下品で悪趣味なんだよ。サロンで働く娼婦の職能を見極めるために猿人みたいなキモいおっさんや小人症の異相の男との絡みを見世物的に撮るシーンなんてこの時代でも倫理観的にアウトだろうと思った、、異相の男を見て怯える娼婦をクリチャーに襲われてるように演出してる、、これはいかんよね。

ただ、それらの不謹慎で下品なエロもドラマがいいから観てる時はあまり気にならない。ドラマ部分はエロとは対照的に展開と演出が細やかで巧み。
特に、サロンやナチ高官の豪華な邸宅での贅沢な食卓のシーンで必ずハエの羽音を入れてる演出に唸った。これは見栄えがどんなによくても中身は腐りきったナチスの治世を見立てているんだよ。この詩的な演出はやはりただのポルノ屋にはできいないぜ!
この辺がブラスの凄みなのだと思った。やっぱりゴダールともつるんでたわけだし才能はあるんだよな。

それとこれは『イルザ ナチ女収容所 悪魔の生体実験』なんかと同じ所謂ナチス・プロイテーション映画としても価値が高いね。ナチが絶対悪ってことを盾に取ってエロもグロも槍放題にやるこのジャンルで圧倒的に予算が高く名優が出てるからね笑
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