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ウィーアーリトルゾンビーズのkkmovoftdのレビュー・感想・評価

3.8
冷静に見渡してみればこれから何ひとつ良い方向に向かわなそうなこの国で、身体として生きることとバーチャルな世界に存在することの境界線がどんどん曖昧になっていくこの世界で、それでも生きていかないといけない我々がたとえ僅かでも希望を持てるとしたら?
この作品は、この問いにギリギリまで真摯に答えてると思う。

すべてを諦めきったような子どもたちや世相をケレン味たっぷりに描いていて、そう、我々の人生にはもう熱くなることなんてほとんどないから、あとは外的なエフェクトとか過激な調味料とかで飾るしかないよな、と思った。花畑の中棺桶ロッカーを中学生が引っ張って走るシーンとか、レフンを更に色でビシャビシャにしたような夕暮れとか、過激に演出されたシーンの美しさも素晴らしかったけど、一方でゴミ袋に怒り狂ってた人がニカッと無理に笑うシーンとか、土臭い美しさもちゃんと映っていてそこも良かった。

なかでもファミコン世代にグイグイ来るようなオマージュが沢山盛り込まれてて、8bitな音楽もマザー(2じゃなくて1の方)みたいにどこか哀しげで美しくて、大声を出して感情を露わにする人が殆ど出てこず淡々と流れる画面と相俟って、子供の頃に1人部屋で、画面の中の世界の危機に立ち向かっていた頃を想い出すような心持ちになる。やはりゲームも個々人の中にひとつの場所を築く、音楽や小説や漫画などと同じメディアなんだと思った。しかし今の若い人にも、建物に入る時の「ザッザッ」って効果音とか通じるのだろうか。

これだけの冒険をして、最後は地味に普通のところに着地するんだけど、地味に普通のところに着地することこそが、確かに今持てる精一杯の希望なのかもしれない。

色んな珍しい人が沢山出てて、クリトリック・リスのおっさんが借金取りだったり、道歩いてたらバレンシアガのモデルにスカウトされてバズったプラズマが事務所スタッフだったり、そもそも主人公の一人がボギーの息子のモンド君だったりするんだけど、のび太系主人公の最悪の未来の姿がぼく脳だったのには笑いました。
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