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HOMIE KEI チカーノになった日本人のblacknessfallのレビュー・感想・評価

4.0
破格の男だよね。経済ヤクザとしてバブル時代を謳歌、サイパンでの麻薬密輸でFBIに逮捕、アメリカの刑務所でチカーノのキャングの仲間入り日本人で唯一のチカーノギャングのメンバーに。そして現在は被虐対児童のカウンセリング、子供が自由に出入りできる子供食堂兼フリースペース運営、チカーノファッションブランドとショップの経営。
一体何人分の人生なのかという笑 上映時間は短いけど振り幅の大きい特濃のエピソードの数々にクラクラした笑

チカーノになる前のヤクザ時代のエピソードが激ヤバなんだよ。中学生ぐらいから"少年ヤクザ"として歌舞伎町を拠点に暴れまくってた。この当時は"少年ヤクザ"が流行ってたらしく(信じがたいが事実らしい)KEIさんの他にもけっこうな数の少年ヤクザがいて社会問題になってたらしい。少年らしくママチャリのカゴに出刃包丁入れて少年ながら切った張ったに明け暮れてたと笑
そして時はバブルになり地上げや高級外車の詐欺でギンギンに稼いで経済ヤクザとして頭角を現す。
この辺の話、昔のヤクザ友達と語ってるんだけど、このヤク友の方はまだ現役らしく6年の服役を終えたばかりとか。KEIさんの話に一切フカシがないことが分かりビビる。一緒にメシ食ってた友達が射殺されて脳ミソ🧠が飛び散ったとか、出てくる話があまりにまんま過ぎるんだよ。
そのヤク友の「ビール瓶と違ってヘネシーの瓶は頑丈だから頭に振り下ろしても割れないんだよw 」て言葉にガチで暴力で生きてた人のリアルを感じた。酒瓶で人を殴ったことないからわからないよね、そんなこと笑
それと別のヤク友が日本に初めてコカインを密輸したのも自分達だとちょっと得意気に話してるのも印象的だった笑
とにかくいかにKEIさんとその仲間達がヤバいヤクザかわかる。特級呪物級だよ!

そんなVシネ的な生き方をしてきたKEIさんの人生観を変えたのはアメリカの服役先、カリフォルニア州ターミナルアイランド刑務所のチカーノギャングの囚人達。
このターミナルアイランド刑務所は凶悪犯ばかりが収容される危険な刑務所で頭のおかしい殺人犯や狂暴なギャングだらけ、白人、黒人、ヒスパニック、あらゆる人種のギャングの派閥に分かれてる。
そんな中、唯一日本人のKEIさんは孤立してたんだけど食堂で1人のチカーノギャングと諍いになる。相手は刑務所内のチカーノの大ボス😱普通ならここで人生終るけど、なんとこの大ボスに度胸を買われチカーノギャングのファミリーの一員になる笑
これも映画みたいだよな、しかもこの時点でKEIさんは英語が殆ど話せなかったらしい、どうやって気に入れたのか不思議だよな笑 その辺りを語ってるんだけど、KEIさんはあまり言葉が出るタイプじゃなくて抽象的なこと言うばかりでよく分からなかったんだよな。
それとKEIさんの口調はかなりまったりして穏やか、腰が低くて言葉使いも丁寧、経歴とギャップがある笑 でも、本当に怖い人ほど紳士的だったりするからホンモノってことなんだろうな。

チカーノになったとは言え、どこの馬の骨とも分からん日本人が大ボスに気に入られたことへの嫉妬から他のメンバーから嫌がらせをされる。しかし、これも持ち前の度胸と人間力で最終的に若いメンバーからは"お父さん"と日本語で呼ばれるほど好かれることに笑
この頃には英語も少しつづ話せるようになってたみたいなんだけど、英語をマスターするために娯楽室で映画を観て頻繁に出てくる単語をメモして覚えて徐々にマスターしていったと言うからビックリ。頭もいいんだろうけど、地道な努力もできる性格なんだな。

そんな感じでチカーノギャングと絆を深めながら懲役を努めあげ、日本に帰国後、最初に書いたように不遇な子供達のために社会奉仕に邁進するKEIさん。何故、生き方を180度変えそんなことをしてるのか?
チカーノギャングの仲間や家族を大切にする思いに触れたからだとKEIさんは言う。
KEIさんは両親にネグレクトされて子供時代を過ごした。母親は彼を産むと何処かへ行ってしまい彼を引き取った親戚のとこへ年に1度か2度訪れ服やお金を置いていくようなかなり自分勝手な人だったから、KEIさんは「家族愛が分からなかった」「母には生んでくれた人」という気持ちしかなかったと語る。驚いたのがこの酷いお母さんのインタビューシーンがあるんだよ。
彼女は自分のネグレクトを詫びることもなく、KEIさんの嫁さんを「あんな女どこがいいのかわからん」とか「自分への親孝行が足りない」「義理人情がない」とヌケヌケと不平不満だけ語ってた。これを見て納得したね、自分勝手なひどい親だったんだと、KEIさんが語ってる以上に、、
その分からなかった"家族愛"をチカーノギャング達が自分に教え与えてくれた、と。
同時に明確な答えはないけどそこに困ってる子供達がいるからやってる、とも言ってた。それと同時に過去の自分の罪をこれでチャラにしようとしてるわけでもない、とも。

肝心で核心の部分なんだけどイマイチ曖昧模糊としてる印象を受ける。でも、沸き上がる善をなしたい気持ちは外側から理解しやすい理屈で説明できるもんじゃないのかも知れないとも思うので、リアルな説得力と人間存在の不思議を感じた。

この他にも出所以来会ってないチカーノギャング達とアメリカでの感動の再会とか語りたいところはいっぱいあるんだけど、まあ、おもしろいとこ全部書くのもヤボなんでこの辺りで笑

とにかくこれを観ればKEIさんのことを好きになるよね、ほとんどの人が。
おれも大好きになったから彼のYouTubeチャンネル見た。アウトロー仲間のあぶない話はとても楽しめたけど、維新系の政治家やネトウヨYouTuberと談笑してるのはガッカリした。あげく「安倍さんを応援したい」とか言ってたり、、何故だ!?奴らはあんたが助けようとしてる子供達を不幸にする存在だぜ💢
見なきゃよかったな、、
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