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人間失格 太宰治と3人の女たちのodamakinyanのレビュー・感想・評価

4.1
太宰治の作品は片手で数えるぐらいしか読んでいません。この映画のタイトルの人間失格は小畑さんの表紙だったので文庫を読みました。しかし自殺の直前に書かれたものとは知りませんでした。こういう破滅型の文士と呼ばれる人がいた時代は、私のごく若い頃まであったようです。作家名は忘れましたが、週刊誌で愛人関係でもめている記事の見出しがありました。この映画の描き方では、やはり文壇バーと呼ばれる場所での作家たちの自慢話から、そのような無理をしてしまうという素地が社会的に存在していたようです。しかし結核とわかっていても宴席をやめないしやめさせない態度というのは、いくらなんでもひどいと思いました。言いたくないのですが、非常に文化的に低く土俗的風習だと思いました。

そんなわけで違和感はありましたが、昭和の戦後すぐの時代映画ということで興味深く拝見しました。いわゆる太宰氏の伝記のまま描かれた作品だと思います。三人の女性がいるわけですが、お見合いで結婚した奥さんのことを一番愛していると遺書を残してしまう太宰は、やはりだめ人間と言われても仕方がないでしょう。なぜなら恋と革命が人生では一番大事だと公言していたからです。この言葉は二番目の女性の言葉だそうですが、劇中で太宰も何度も口にします。それは作家の強がりだったわけですが、その見栄と本音の板挟みになって、病魔にむしばまれる前に女と心中してしまう太宰は、当時の文壇のありように対して、あまりにも心のやさしい人間だったのでしょう。心の弱いと書かないのは、その板挟み状態だったからいろいろな作品を心を強くして執筆し続けたと思うからです。そういう気風の文士の時代だったのだと思います。この映画はそれがわかりやすく描かれていて、場面転換も早く、特殊効果もきれいだったです。2時間
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