ひさかた

ギレルモ・デル・トロのピノッキオのひさかたのレビュー・感想・評価

5.0
あなたと私が共に息吹く世界は、こんなにも美しい。

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戦争の足音が自身の住む町にも少しずつ近づいているような戦時下の物語。
どこかでミサイルが落ちた、何かが燃えた、まるで他人事に感じつつも着実に自分の身近に迫る危険。それはある日、自分の大切なものを奪うことにもなる。誰にだって嫌になるほど平等に襲い来る鉄の塊は、平和に暮らしていた父子にも降りかかった。最愛の息子を失った父親の落胆は、私が語るにはとても重く悲痛なものだ。彼は酒に暮れ、自らを失い、いよいよ息子を作って自身を慰めようとする。それがこの物語の主人公、ピノッキオになる。

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めちゃくちゃいつものGDTではあるんですけど、これが超いいです。ダークファンタジーチックな寓話なんて、彼が誰よりも得意なジャンル、面白くないわけがない!相性バッチリです。GDT作品の持つありのままを愛してくれる優しさが、この作品にもたくさん込められています。

ピノッキオは真っ直ぐな愛らしい子どもだからこそ、大人に振り回されまくります。
操り糸なしに動く金儲け直結カーニバルのスター、脈打つ心臓がない故の無限の命を持つ兵士、最愛の息子の穴を埋めるための存在。そんな中でも愛する人だけを想って生きるピノッキオがかわいすぎ健気すぎて、それだけでもう号泣。
クリケットの明るい語り口も相まって、大人も子どもも楽しめる最高の寓話、愛すべき作品に仕上がってます。

これが劇場で観られるうちに、ぜひ。心を温めてください。
ひさかた

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