一八

ギレルモ・デル・トロのピノッキオの一八のレビュー・感想・評価

4.8
【モンスターに願いを】

デルトロが贈る最高のクリスマスプレゼント。
童話『ピノッキオの冒険』を1930年代ムッソリーニ政権下のイタリア、嘘つき集団ファシストの操り人形の話に置き換える、大胆なアレンジを加えた木彫りのストップモーションアニメ映画。

物語の構成のバランスが良く出来ていて素晴らしい。
作品の中に含まれる陰と陽の部分。
ファンタジーなおとぎ話でありつつも、史実を強く反映した世界設定。
ピノキオのストーリーを最大限にリスペクトした作風でありながら、痛烈なアンチテーゼが盛り込まれており、単なる焼き直し作品ではない、メッセージ性が強く尚且つ誰でも楽しめる作品にへと昇華している。

一番嬉しかったのが、あの『パンズラビリンス』『シェイプオブウォーター』で見せてくれた構想、即ち、神から守護者の命を受けた純粋無垢なモンスターによる憐れみと救済が、より鮮明に、より温かみを増して描かれていたことだ。
モンスターとは何者だ?
彼らはこの地上に迷い込んだ存在だ。
元のいた世界に帰る為には周囲の人間からの迫害や搾取を乗り越えて、現代社会のあれこれを学ばなけばならない。
その過程を通して声なき人々に立ち上がらせる力を与えながら自身も成長していく。 
最後はどうなるかって?
モンスターが勝って終わるのさ。

映画のオマージュも盛りだくさん。
『フランケンシュタイン』『アルプスの少女ハイジ』米国の戦中プロパガンダアニメ、『フルメタルジャケット』『ジョーズ』
ラストの浜辺のシーンは『コルドロン』を彷彿させられた。

リブートとは本来こうあるべきだよなと再確認できる作品だった。
モンスターへの熱い願いに満ちた、とても暖かい気持ちになれる傑作です。

【余談】
僕のベストピノキオは『シュレック2』です。
ギャグは正義。
一八

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