いの

スウィング・キッズのいののレビュー・感想・評価

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)
4.0


ファッキン・イデオロギー


イデオロギーという肥溜めで、ずぶずぶに糞まみれになって、抜け出せず、泣くに泣けず、泣いていたとしてもその涙を拭うこともできず、もうどうしようもない。そのなかで、彼等はタップダンスをする。光る靴底で、床を踏み、床を蹴り上げ、そして高く跳躍する。高く跳躍しても、フェンスを跳び越えることはできず、空を舞うこともできない。観ている私も、もうどうしたらよいのかわからない。タップダンスのできない私は、地団駄を踏む。くっそーと独りごち、うつむいて歩きながら考える。考えてもわかんない。凄い映画だった。引き摺るだけ引き摺ろうと思う。


時期:朝鮮戦争中
場所:巨済島の捕虜収容所
主要な登場人物:ダンスチームの5人(イチオシは荒川良々のようにも見える中国人、あのダンスなんなん!?笑)


イデオロギーなんてどうでもよく、ホントにどうでも良かったんだ。どうしてそんなもののために、こんな糞にまみれなくちゃならないのか。どうして、そんなもののために、家族が死に、家族と生き別れ、そして今ここに自分がいなくてはならないのか。どうしてこんな有り様に。
その気持ちは、観客の多くが共通して抱く思いだと思う。傷のいっぱいついた床に触れ、その床を優しく撫で上げ、できることならその床にキスをして、彼等の思いを感じたい。○○人はこんな人、なんて区分けは不要。思いは分け合える。思いを分け合いたい。今、言葉にできるのはその思いだけだ。
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