みとも

天気の子のみとものレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
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豪雨という避けられない現実に対し、インターネットというテクノロジーを使いながらも”晴れ女”に”神頼み”するスピリチュアリズム(それはSNSにアマビエのイラストを載せるような行為にもどこか似ている)。そうした土着的な信仰はナショナリズムを生んでしまうし、そういった歴史もあるし、今もなお続いている。それを拒否する主人公を止められる者は一人としていまい。
『天気の子』が描く社会は窮屈で不寛容だ。消費社会の断末魔のごとき「バーニラ、バニラ」や「100円マンボー」が流れる街は退廃的で貧しく、またそこにいる人々も卑屈に不貞腐れている。漫画喫茶の店員、ホテルの階段ですれ違う男、新宿の高架を走る主人公に浴びせられる野次……資本主義の末路とでも言うべきこうした社会の気分に対して、この映画は「(”大人”たちに)銃を向けてもいい」という”若者”への”メッセージ”であるのか、あるいは「下の世代が銃を向ける相手は自分かもしれない」という新海誠自身の覚悟であるのか。上から目線の説教などではない、後者のような誠実さを自分は感じた。
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