『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』
⚠️⚠️ネタバレあり⚠️⚠️
流石にこれは感想を書かなくてはどうする。ということで忙しい新社会人生活の中、本作を観てきた。
『ドクターストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』はMCU映画作品で考えれば28作目であり、『ドクター・ストレンジ』シリーズでは2作目にあたる。監督もスコット・デリクソンから『スパイダーマン』シリーズでお馴染みのサム・ライミが務める。かなりホラー描写が多く、『死霊のはらわた』の監督だなということが伝わる。
結論からこの映画に対する感想を述べると、シンプルに楽しめた映画ではあったが不満な部分もある。
ワンダはディズニープラスドラマ『ワンダ・ヴィジョン』で描かれていたものの延長線っぽい印象を受けた。でもその最終話では救われないような描かれた方だったため、ワンダが今作のヴィランとして登場するのは違和感なかった。架空ではあるものの愛する息子たち、ヴィジョンを失った彼女をドラマで見ていたし、感情も移入はできたかな。ただ映画の構成としては、新しい形の復讐を観たかった。やってることがイマイチ『ワンダヴィジョン』とは変わらないから、物語が進んでいるとはあまり感じられなかったのが正直なところ。
でもそのワンダと表裏一体であると感じさせるストレンジの描き方は良かったと思う。ストレンジも同じようにクリスティーンと一緒にいられない生活を送っている。ストレンジとワンダはヒーローとヴィランという対の関係ではなく、内面を見れば紙一重であることは明らか。ゆえにワンダの描かれ方はやはり『ワンダヴィジョン』の延長線上で、それは意図的なものなのかなとも思う。
そして本作もマルチバースの広がりが存分に感じられる作品だった。その大きな要因がプロフェッサーXやミスター・ファンタスティックをはじめイルミナティの登場である。作品を本格的にクロスさせるのは『スパイダーマン・ノーウェイホーム』の次に当たる。映画の中では彼らはワンダと対峙することになるが、手も足も出ずワンダに殺される。わりと描写もスプラッター的で残虐的であった。このようにMCUらしからぬ新鮮だと感じられることがこの映画では多かった。血まみれのワンダが必死に追ってくるなどホラー描写も強い。
新鮮だったかは別として、この映画に機能していたか個人的に好きだったかと言われればあまりそうではないことも多かった。ホラーシーンは多く、割とくどいなって思うシーンが多々あった。ヒーロー映画とホラー映画のその二つのトーンが一つの映画として成り立っていたとは個人的には思えない。
そしてイルミナティは登場するもすぐに虐殺されてしまうことがあった。ここも一つ賛否両論が分かれるシーンらしいが、個人的にはあまり好きではなかった。期待されていたキャラクター・新しいキャラクターがすぐに殺されてしまったからという理由よりは、ただプロフェッサーらを出しただけに感じられてしまった。もちろん彼らの登場で本当にマルチバースが存在し、MCUにもX-MENなどが登場する今後への期待は高まった。しかしマルチバースという要素が中心になるにつれてきて、表面的なことが多いと感じられてしまった。それこそただ出しただけに感じられるというところに繋がってくる。
総じて賛否両論であるこの映画に対して、感想としてはどちらでもなく、強いて言うなら「まあ普通に楽しめた」というものである。ドラマの延長線としてのワンダの描かれ方、パートナーがいない日々を送るストレンジのドラマはすごく良かった。しかし一つのテーマであるマルチバースは少し軽薄であったと感じられる。アース838のキャラクターたちを出して、すぐに殺されるシーンはワンダの脅威さ・強さを示すためには効果的だったとは思われるがそれまでである。マルチバースの序章に当たるから仕方ないのも理解はできるが、ならばもう少しドラマ要素に焦点を当てても良かったかもしれない。
見終えたマルチバースの話はしばらくいいかなとも思えてしまった。同時に配信が進んでいた『ムーンナイト』がかなり良かったのも一つの理由である。一つの世界観が丁寧で面白くかつ興味深く描かれていた。個人的にはこちらの方が好きだった。