ShiroKyogoku

黒い司法 0%からの奇跡のShiroKyogokuのレビュー・感想・評価

黒い司法 0%からの奇跡(2019年製作の映画)
4.0
死刑判決の冤罪を扱った作品。
法廷ものの実話なので映画としては地味だけど、人種差別が絡んだ司法制度の問題、さらにその制度としての死刑そのものについて考えさせられる作品。

功利主義=最大多数の最大幸福の追求…の為には、1人の命の犠牲すらもある種認められることがあり得るか?という隠れた倫理的命題もこの作品には含まれていると思う。

以前、法哲学の講義で「法の役割は1人でも多くの犯罪者を検挙し裁くことではなく、1件でも少ない冤罪という正義の実現だ」というような話を聞いた事が印象に残っている。
それだけ法は1人の人間の多くの可能性を剥奪する能力を持っている。時にはその命さえも。

日本でも、冤罪事件といわれるもの、しかもその可能性が強く疑われながらも作品のように無罪判決へと覆る事なく、実際死刑が執行されてしまった飯塚事件などは、現在でも最高裁へと抗告中である。

偏見や差別といったところから、一方的な見解に固執し、更には被疑者を犯人と仕立てるストーリーまで作り上げてでも、より多数の平穏の為に、無実の者を犯罪者としてしまう可能性のある司法制度。
恐ろしい事だけれども、自分たちもその世界の中に生きている事を忘れてはいけないし、そのような事が起きないよう多くのことを知っておかなくてはいけない。

更には、最悪の場合、そのような事があった時に国家は取り返しのつかないことをする可能性が死刑制度というものには含まれていることも、その制度への賛否とは別として、現在その制度のある国に生きる自分たちは、よく考えなくてはいけないと思う。
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