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犬鳴村の655321のレビュー・感想・評価

犬鳴村(2020年製作の映画)
3.0
子供の頃、友達のお母さんが先生をしている
書道教室に週1、2回通っていた。

その途中に電話ボックスがあった。

教室が終わるのは17時頃とはいえ、
冬になると辺りは暗い。
それでも電話ボックスだけは
いかにも人工的に周囲をぼうっと照らしている。

ある日、気付いた。

小さな巾着袋がある。
子供の弁当箱くらいなら入りそうな程度の
青い水玉模様の巾着袋。

電話をしたあと忘れたのかな、と思った。
次の週も、その次の週もそれはそこにあった。

でもそのまた次の週には、無かった。

代わりにオレンジ色の巾着袋がそこにあった。

それからもあの巾着袋は
時々別の種類に代わっていた。

巾着袋のなかには何が入っていたのだろう。
誰が何のために置いていたのだろう。
誰がいつ回収していたのだろう。
…なぜ電話ボックスでなければならないのだろう。
今となってはわからない。


…それ以来電話ボックスは苦手だ。
あの中には自分が知っちゃいけない
何かがあるみたいな気がして。

電話ボックスに閉じ込められるなんて
考えたくもない恐怖だ。

あぁこの映画でも
人があまり通らない山道で、
電話ボックスは
早く見つけて欲しそうに光を振り撒いていた。
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