みかんぼうや

クーリエ:最高機密の運び屋のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

3.9
これは噂に違わず面白い!キューバ危機のなか、米ソの核戦争を避けるために奔走した人物たちを描く実話ベースの物語ということで、素性がバレないようにミッションをこなしていくハラハラドキドキの内容を想像していました。が、その先には、それを超えた、使命感に生きた男たちの友情が描かれており、むしろそちらに心を掴まれました。

正直なところ、前半一時間は食い入るほどの没入感はなく、「期待ほどでもないかな?」なんて思ってしまいました。後半一時間は脱出劇的な緊張感が出てきて「アルゴ」のような感じになるのかと思いきや・・・なんとも苦しくも心震えるクライマックスへ。

ネタバレになるので詳しくは書きませんが、登場時とはもはや別人と思うほどの姿となった、まさに“身を削り切った”ベネディクト・カンバーバッチの徹底した役作りと、そんな彼が“戦友”の手を握り語り合うあのシーン。しっかりと記憶に刻み込まれました。なんと言っても、この内容が実話だという破壊力・・・

映画としての完成度も非常に高く、この監督の他作品も色々と観てみたくなりましたが、元々演劇の監督で、映画監督としてはまだ2作品目なのですね。

かつての冷戦とは異なれど、欧米とロシアの関係は(さらに中国も加わり)この映画の時代以来の緊張感となり、各国内での政治圧力の話もニュースで多く目にするなか、我々の知らないところで、また本作のようなことが繰り返されているかもしれません。もしそうであるならば、本作の主人公たちのように勇気ある人物たちがそこにいることをただただ願うばかりです。
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