むらむら

新喜劇王のむらむらのレビュー・感想・評価

新喜劇王(2019年製作の映画)
5.0
【前回までのあらすじ】 アマゾンに騙されて「キング・オブ・コメディ」をコメディだと思って観て後悔した俺は、新宿武蔵野館を訪れることにした。そこで上映していたのは、周星馳(チャウ・シンチー)監督の「新喜劇王」。

これだよ これ。俺が求めていたのは。デ・ニーロなんていらんかったんや。周星馳、最高!

30を過ぎても夢を諦めきれない、万年エキストラのモン(エ・ジンウェン)が、かつての大スターで、今や落ちぶれ気味のマー(ワン・バオチャン)に出会って……という内容。

主演のエ・ジンウェン、実際にこの作品で大抜擢された無名女優さんらしい。作品中では整形させられたり裏切られたり、文字通り踏んだり蹴ったりされたり、散々な目にあうのだが、それでもひたむきに頑張るその姿は、まさに適役、という感じの素敵なコメディエンヌぶりを発揮してくれる。

とにかく、もう上映館も少なくなってきてるので、あまり考えずに是非観て欲しいと思いました。

周星馳の映画って、ドリフのコントみたく庶民的でベタで、あんまり大っぴらに「大好き!」って言いづらい感じがあるんだよね。俺も普段は「グレタ・ガーウィグの新作良かったよね!」とか語ることが多く、周星馳の映画は、隠れキリシタンのように、密かにしか勧められない気がする。

だけど、それでいいじゃん、って思うのだ。俺、笑って泣ける単純な映画、大好きですよ。俺はデ・ニーロの映画しか観られない世界線と周星馳の映画しか観られない世界線なら、迷わず後者の世界線を選ぶぜ! と、穴に向かって叫びたい。

特にグッと来たのが、映画を作る全ての人への愛を感じるエンドロール。

泣かされるとは思えないシーンが羅列されるんだけど、この映画観たあとだとウルっと来ちゃうんだよね。新宿武蔵野館、残念ながらお客さんは10人に満たない感じだったけど、エンドロールみながら、俺はこの映画を、新宿武蔵野館で観れて良かった。映画最高! って思っちゃったぜ。

俺は若かりし頃、「でんきまむし」という映画でエキストラに行ったことがある(関係ないけど、隣に映画秘宝の田野辺さんが座ってた)。当時、その映画の出演者たちは若くて無名だったし、撮影自体もゲリラ的な、許可を取ってんだかどうかか分からないような手法だったが、監督も出演者も、とても輝いていたのを覚えている。

この映画に出ていた人たちの中で、有名になった人もいれば、そうでない人もいる。諦めきれないで、インディー活動をしている人も沢山いる。

「諦めなければ、それは成功してるってことだ」
"Not Giving Up, is all what success about"

これは「新喜劇王」の台詞だが、俺はとても良い台詞だと思った。重要なのは、諦めないことなのだ。

明日から俺ももう一度だけ、頑張ってみよう。

(え? 今日からじゃないの? ってツッコミは無しでお願いします……)
むらむら

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