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アスのHrtのレビュー・感想・評価

アス(2019年製作の映画)
3.6
レーガン政権から数えて4代に渡って自由競争の名の下、富裕層への減税を促進してきたアメリカは、その間に国民の経済格差が大幅に開いたと聞く。
そのレーガン2期目の中で行われたのが劇中に出てくる「ハンズ・アクロス・アメリカ」、当時7歳のジョーダン・ピール監督もTVのコマーシャルなどでイベントを知っていたことだろう。
それを2019年に扱おうとしたのは現在のアメリカを映していると監督が考えたからだろうが、と同時に同じようなことが日本国内でも少なからず見られると思う。
日本やアメリカだけじゃないだろう、各国で経済格差は露呈し、様々な社会的問題を孕むようになった。
日の目を見たい。恵まれた生活をしているあの家族に「なりたい」と思い始めたところから本作の幕が切って落とされる。

ジョーダン・ピールのシグネチャーと言って差し支えない独特の音楽と役者の表情による不気味なスクリーンは『ゲット・アウト』同様訳の分からない恐怖を感じさせ、訳が分かるようになる終盤でさらに背筋を凍りつかせる。
とは言え親切すぎたのか、結末が若干透けて見えていた気もする。
オチにクオリティを担保させるような類の作品ではないので問題は無いが、映像による語りを少なくしてもよかったとは思う。

“わたしたち”がタイトルとなっている様に、他人事にはなりようもない事象が自分の眼前に迫る。
「自分との戦い」という人生におけるクリシェが最大の脅威と恐怖を持って現れるように、「自分」との「自分」の奪い合いなのだ。
手を繋ぐだけではもちろん何一つ解決しない。
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