めっちゃ良かった。思ったより怖い。
襲い来るドッペルゲンガーとの、殺すか殺されるかのサバイバルスリラーとしてだけ見てもかなり上質。
後半のカルト的展開は人を選びそうだけど、個人的には好きだった。
地下空間のビジュアルが良すぎる。降りる側しかないエスカレーター、妙に綺麗な廊下、ウサギ、檻のある教室…。
虐げられて来た人々の場所なら、もっと汚くて暗そうなものを、あえて神聖な空気にして、そこに異常さを散りばめる造りに惹かれる。
社会派というか、格差社会への痛烈な皮肉が効いているのも良かった。
赤い服の集団に「あなたたちは誰」と尋ねると「アメリカ人だ」と答える。これは「(ないがしろにされてきた私たちも)アメリカ人だ」ということのように聞こえる。
彼らが手を繋ぐ列が海にまで連なっている様子は、メキシコとの国境の壁を彷彿とさせる。
一家が「海沿いにメキシコに逃げよう」というのも、メキシコからアメリカに入ろうとする不法移民の逆バージョンのようで皮肉が効いている。
「格差をなくそう!」みたいなどストレートなメッセージではないのが良い。ちゃんと映画として面白いうえに、とことろどころで現実のモチーフを散りばめている、この「皮肉」感。
皮肉で言えば、Fuck the policeのくだりとかとかなり突き放した作りで笑った。
「ホームアローンて何?」とか、「俺は2人殺したから2点」とか、ところどころ笑えるのも面白い。
ただ、後半にかけて赤い服の奴らに同情心が芽生えてくる。整形の代わりに自分の顔をハサミで切って、うまくいかずに泣いてしまうおばちゃんとか見ると、怖いけどどこかかわいそうな気がしてくるんよな。
そうなると、そういう「上の奴ら」のふざけた態度も不謹慎な気もしてきて、観客の心をざわつかせるのがうまいな〜と思う。
ラストのオチも、これまでの発言や行動と矛盾するにはするんやけど、「ドッペルゲンガーものはやはりこうでないと…」と謎に腑に落ちる感がある。