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一人の男、私の息子のマーチのレビュー・感想・評価

一人の男、私の息子(2017年製作の映画)
4.0
【感想】

映写技師の父親と、同じく映写技師でドラァグクイーンであるゲイの息子の2人が、妹の企画した映画上映会へ向かい、映写するまでの旅を描いた物語。

妹は父親を遠ざけており、父親と息子の関係も少しギクシャクしているが、息子の仕事やその仲間たちとの出会いを通じて、父親の気持ちも次第に変化していく…

この過程の描き方が実に丁寧で、ずっと観ていられそうなほどテンポもいい。完全には融解しないけれど、それでも着実に息子の性について理解を深めていく父親の姿が今の時代の普遍性を表していて素晴らしかったし、つけまつ毛を父親に付けたりするちょっとしたユーモアも心情の変化を映像的に表現していて良かった。

娘と父親の関係性が和解しそうでし切らないあたりもリアリティがあって良かったし、安易な結末に落ち着かないのも好印象。
34分の短編とは思えない、深みのあるいい作品でした。

親子を唯一繋いでいるのが“映画”というのも最高だし、その点ではメタ的なはずなのに変にメタメタしくなく(露骨でない)、素朴なメタさなのがまた素晴らしい。映画好きであればあるほど、その繋がりにグッとくるかも。
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