さて、何を大事にしてこれから生きていこうか...
男が、純粋な心に触れて、失いかけていた大事なものを取り戻すまでの話。
老いた父との二人暮らし、現実との折り合い、くすぶる信念、結婚しろという周囲のプレッシャー...
主人公スノの直面している問題が自分の問題と重なって、人ごととは思えなかった。
ほとんど自分のことのようだった。
スノが葛藤している場面では、気持ちが手に取るようにわかった。
もちろん独身男性であればよくある問題だと言える。
けれど、この作品では人としてどうあるべきかが問われており、それに応えられるかどうかがこの直面している問題を左右するように思われて、胸が締め付けられるようだった。
あなたはいい人ですか。
そう問われてすぐに答えられず、はぐらかしてしまったスノ。
いい人であると即座に答えられる人はあまりいないと思うけど、だからといってはぐらかしてしまうのはやはり後ろめたい気持ちがあるから。
スノが、大切にしてる女性に現実を見ろと繰り返し言ってしまうのは、それを受け入れきれない自分に対して言っているように見えた。
納得のできない世界に染まっていく自分に対する言い訳だった。
いい人であるかどうかは人との関わりの中で決まると思う。
それはとりもなおさず人としてどうあるべきかを問われていることと等しい。
人と接する姿勢にはどういう生き方をしているかが如実に表れる、ということだ。
そして、いい人であるかどうかというのは人と接する姿勢そのものである、ということだ。
証人ジウの心の中に入ることができたのは、やはりスノが人を尊重できるいい人であったからだと思うし、スノが自分にとって大事なものに忠実になれたからだと思う。
いい人であるとはどういうことか、人としてどうあるべきか、この作品は教えてくれている。
僕もいい人であろうと努力していたい。