うるぐす

台風家族のうるぐすのレビュー・感想・評価

台風家族(2019年製作の映画)
4.3
クズ野郎でゲス野郎な父親が娘が触ろうとした扇風機を蹴り飛ばす。そんな不器用な愛が、不器用な草彅剛がたまらなかった。


実家で見苦しい遺産相続争いを繰り広げる草彅剛、MEGUMI、新井浩文の3人がとてもゲスさが上手くて、そこから流れを変える若葉竜也、中村倫也がとにかく絶品。『愛がなんだ』でよかった若葉竜也、この映画でも魅力が炸裂してた。コミカルな中村倫也もこれまた最高。キャスティングたまらなくよかった!

ほとんどが実家でのやり取りだったから、演出が舞台的で、奥行きがあって手前の世界と奥の世界が繋がりながらも少し分断されていた。一つの画面に登場人物全員を写すのもまた、舞台的であり、それと同時に家族写真のような印象を受けた。それは、この映画において重要なメタファーで、遺影に使われていたのも家族写真だし、最後のドラマチックな冒険のきっかけにもなり、ラストのファンタジーにもつながる。

ラストのファンタジーに関して賛否両論あるみたいだけど、台風をきっかけに家族が家族になるために、それでいて説教くさくならないために、物語として必要不可欠だったと思ってしまいました。(受け付けない人の気持ちもちょっとわかるけど)
ガイコツの遊泳で、結果的に台風であの日行けなかった海に、台風の日に全員でたどり着いたわけだから。

物語の伏線の散りばめ方が結構散りばめたというか散らかってたけど、それをちゃんと上手く回収していたのもよかった。


台風の中家を飛び出していくシーンはめちゃくちゃカッコよくて、ここでもキャスティングの巧みさを感じました。あの部分だけでも何回も観たい。新井さん早く償って帰ってきてくれ。
本来3週間限定、とかじゃなくてしっかりロングランするはずの映画だったんだなと映画を見て、あたりまえなんだけど、思い出したりして。

冒頭に書いた、扇風機のくだり、個人的にはすごく好きだったんですよね。あれが小鉄(草彅剛)のキャラクターを一番表現できてたシーンじゃないかな。

観終わって、いろいろ整理すると、めちゃくちゃいい映画だったと思えてきた。
これもまた映画体験だよな、と思った。
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