えむ

ボーダー 二つの世界のえむのレビュー・感想・評価

ボーダー 二つの世界(2018年製作の映画)
3.6
なんとも不思議な作品で、サスペンスの匂いもするし、ダークファンタジーの匂いもする。

主人公のティーナは仕事もしていればパートナーもいるし、他者との中で地味ながらも普通に暮らしている。

でも姿は異形で独特としか言えないし、犯罪のような、人の怒りや羞恥心や後ろめたさのようなものを、文字通り犯罪を『嗅ぎ分ける』。

犬や獣のように上唇から鼻をビクつかせて嗅ぎとる描出はなんとも不気味だ。

それがある日、自分によく似た者と出逢って運命が動いていく。

最初にその男が登場していつものようにチェックのために呼び出したシーンから、異様な雰囲気が漂っていた。
似すぎているのだ、この2人。

結果、彼は犯罪とは無関係だったけれど、羞恥心を嗅ぎ分けるから、相手の中に、人となんだか違うことで自分が無意識に持ってる羞恥心や罪悪感、後ろめたさのようなものを鏡のように嗅ぎとったのかなあとも思ってしまった。

同時に、犯罪にそのまま繋がらなくても、誰の中にも多かれ少なかれ、そうダークさってあるよなあ、とも。

観ている最中も、見終わってからも、タイトルのボーダーや2つの世界って、なんだろうと考えている。

自分と似た者の手を取りある種の安全圏に逃げ込むのか、これまでやってきたように違う者たちとのチャレンジだけれど慣れた人生を続けるのかという2つの世界を指してるのか。

みんなが同じようなダークさをうちに
持ちながらも、そこから犯罪のように一線を越して逸脱することを選ぶかどうかの境界線なのか。

それとも、そもそも異形のものと人間との間に境目ってどこで、『仲間』って、いったいどっちが『仲間』なのか。

これからどうなるにせよ、少なくともティーナは両方の世界に片足ずつかけ、行ったり来たりをしているなか、『人を傷つける』境界線だけは越さないと決めてるようで、それだけは救い。

ちょっと(今の)パッパは可哀想な気がするけどね…

とにかく、なんとも形容しがたい『異形の』映画であることは確か。
えむ

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