ドント

追風のドントのレビュー・感想・評価

追風(2007年製作の映画)
4.2
 2007年(仮)。早逝した台湾の映画監督エドワード・ヤンが、20世紀最大の傑作のひとつ『ヤンヤン 夏の想い出』に続いて作ろうとしていたのは、アニメだった。本作はそのごく一部分、9分のワンシーン。
 ごく一部、9分の短さでありながら信じられないほど素晴らしい。というか「アニメで長回しをやる」という発想が完全にヤバく、たとえば押井守は暗渠巡りとか夜の道路とかやってるけどそれとはまるで別の、「超ロングショットで、町を移動しながらの、動きがある長回し」をやっており、この方法が風景、世界観、雰囲気を色濃く伝えており、動く絵巻物といった感じ。
 巻物を伸ばしていくかのように町が、世界が、物語がスルスルと展開していくわけである。しかも夜の空気感やライティング(提灯)も抜群で、飛んで跳ねて&カンフーのアクションもある。長回しに胡座をかかず押し引きも抜群。映像にある種のリズムがある。唯一の欠点は未完であることだけだろう。完成していたらアニメの歴史がちょっと変わっていたかもしれない。
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