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バーデンのGreenTのレビュー・感想・評価

バーデン(2018年製作の映画)
1.5
白人至上主義のグループを抜けようとして嫌がらせを受ける青年の実話に基づいたお話です。

『SKIN / スキン』にかなり似た話ですが、こちらはネオナチではなくKKK(Ku Klux Klan)で、舞台になるのはサウス・カロライナ。『SKIN/ スキン』はオハイオだったので、同じ白人至上主義でも北部はネオナチ、南部はKKKなんでしょうか?

廃業した小さな映画館を改造し、KKKが『レッドネック・ショップ&KKKミュージアム』というのを街に作ったからさあ大変。黒人の牧師、デヴィッド・ケネディと黒人の住民は、毎日店の前でプロテストをする。

KKKはお父さんキャラのトム・グリフィンが家庭に恵まれない若者たちを「家族」と称してまとめている。グリフィンの一番のお気に入り、マイク・バーデンは、ホワイトトラッシュ(貧しい白人)のシングルマザー、ジュディと恋に落ち、彼女に説得されてKKKを抜けようとする。

怖いのは、街の警察はKKKと癒着していて、KKKの若者たちは酔っ払ってピックアップ・トラックで走り回り、夜道を一人で歩いている仕事帰りの若い黒人の女の子にトラックの荷台からおしっこをかけたり、黒人の男の子たちを挑発したりしても、表面だけ警察に連れて行かれるだけで、起訴されない。

それとか、トム・グリフィンはKKKの若者たちを連れてインディアン料理の店に行って、普通の人と変わらず店のオーナーと話しているんだけど、「本当に犬の肉使ってないのか(笑)」みたいな失礼なジョークを本当に可笑しいと思っているらしい。インディアンのオーナーは「それはチャイニーズだろ」と合わせて返すしかない。客だから。

ジュディは黒人とも普通に仲良くしているので、こういう態度に耐えられず、マイクに「私を取るかKKKを取るか」と迫り、マイクはKKKを抜けるのですが、そうするとジュディは仕事をクビになり、マイクはどこにも雇ってもらえなくなり、家賃滞納で家を追い出される。

そこを助けてくれるのが黒人牧師のケネディで、マイクはKKKの中でもグリフィンの側近として有名だったので、黒人の人たちは彼を助けたくないんだけど、「愛」を説くケネディは、彼らを助けずにはいられない。

『トロイ』『フォー・ブラザーズ』ですっごい期待していたのに「どこに行っちゃったんだ?」だったギャレット・ヘドランドが主演だったので興味があったのですが、彼の演技はイマイチでした。マイク・バーデンは実在の人物なので、本人のマネをしたのでしょうが、喋り方は『ブロークバック・マウンテン』のイニスみたいだし、歩き方は『ビル&テッド』のキアヌ・リーブスみたいだし、「ホワイトトラッシュ」を演じる悪い例、みたいになっていてガッカリ。

ケネディ牧師を演じるフォレスト・ウィテカーも、名優っぽく見えるけど、そうでもない人。

他のキャラも、特に際立った人がいない。

お話の方は意外なツイストがあるんですけどバラしちゃいますが、マイクを気に入っていたグリフィンは、KKKのショップ&ミュージアムの権利書?みたいのをマイクに上げたんですね。で、ケネディ牧師と仲良くなったマイクは、それをケネディに$1000ドルで売る。

権利を手に入れたケネディ牧師は、KKKのショップ&ミュージアムを改装して、人種差別のない、多様性を奨励するようなミュージアムに作り直したって話なんですけど、「それに寄付をお願いします」と最後にウェッブ・サイトのリンクが出てくる。

ん〜、なんかプロパガンダ映画みたいだな!とちょっとイヤになった。KKKリーダーのトム・グリフィンが「ユダヤ人も黒人も自分たちの歴史のミュージアムを持っているのになぜ選ばれた白人たちは作っちゃいけないんだ」というが、確かにそれは一理ある。KKKは人を殺したりしている歴史があるからとも言えるが、それなら戦闘機とか鎧とかのミュージアムはいいのか?って事になってしまう。

ケネディ牧師の叔父さんはKKKにリンチされて殺されたって背景もあるし、黒人にしてみたらそりゃあイヤだろうなとは思う。グリフィンも、ミュージアムを作ったのは純粋に自分たちの歴史を残したいというよりは、嫌がらせの要素の方が強いから、プロテストに合うのはしょうがない。本当に純粋に自分たちの歴史を残したいなら、地域の人たちの理解を求めるはずだから。

と、KKKの方が態度を改めるべきだな、とは思うのだけど、だからと言って黒人の団体の方に肩入れするとか寄付をするっていうのもなんか違うような気がする。この映画を観た人が、「ああ、この改装されたミュージアムってどんな感じなんだろう?行ってみたいな」って行って、製作者の思いをわかって寄付するならいいけど、映画で寄付を促すのはなんか違う気がした。
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