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沈没家族 劇場版のkyokoのレビュー・感想・評価

沈没家族 劇場版(2018年製作の映画)
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「いろいろな人と子どもを育てられたら、子どもも大人も楽しいんじゃないか」という考えの元、ひとりの若きシングルマザーが「沈没ハウス」で始めた息子の共同保育。
90年代半ばに東中野で始まったこの試みは、息子であり今作の監督でもある加納土が8歳のときに母とふたり八丈島に移り住むまで続いていた。

大人になって当時の生活を振り返ったとき、改めて沸き起こる疑問。

あのとき自分を育ててくれた人たちは、自分にとってなんだったんだろう。
「家族」ってなんなんだ?

呼びかけに集まったのは三十人ほどの男女、保育の素人しかも赤の他人によく任せたなと思うし、ちょっと怪しげなユートピア団体に見えなくもないが、共同保育者たちは育児の思い出を楽しそうに語っているし、土くん自身にも嫌な記憶はない。彼は何をそんなにモヤモヤしてるんだろうと最初はピンと来なかった。

生後すぐに別々に暮らしていた父親とは沈没ハウスにいる間も毎週末会っていたのだという。
彼は実の父親を「山くん」と呼んでいる。
「お父さん」と呼ぶこともできず、アカの他人を家族と呼ぶこともできないまま、みんなが自分を可愛がってくれたけれど、いざ家族というハコに入れようとしたら誰も入れられない。彼の戸惑いがだんだん理解できてきた。


そして母・加納穂子という圧倒的な存在。彼女の「たまたま出会った人と繋がれたらいいじゃないか」という価値観は揺るがない。
実は壮大なマザコン物語なんではないのかという気もした。


http://youtu.be/7H_c71CT1IQ

この映画のために MONO NO AWARE が書き下ろした曲がめちゃくちゃ良かった。はっぴいえんどオシャレアレンジ的な。
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