にしやん

感染家族のにしやんのレビュー・感想・評価

感染家族(2018年製作の映画)
3.7
韓国の何もあれへんド田舎を舞台に、ゾンビ感染にビジネスチャンスを見出した一家が巻き起こした騒動を描いた、今までのゾンビ映画の常識を覆すホラーコメディ映画やな。これまでコメディ色の強いゾンビ映画は結構あったけど、この映画は圧倒的にコメディの方に振り切れてる感じするわ。

本作は完璧ゾンビ映画やけねんけど、ゾンビに襲われる立場の人間の方がよっぽどタチが悪いというんがこの映画のミソや。元々主人公の一家はド田舎で元ガソリンスタンドで車の修理工みたいなことをやってるみたいやねんけど、そんなもんで一家が食える訳もなく、犯罪まがいのヤクザなことして生計を立ててること自体が、だいたいからして最初から成ってない。その挙句に、村にたまたまやってきたゾンビをペットにしてこき使て一儲けしようなんっちゅうんは、この一家の性根は完全に腐ってる。せやけど、みんなどっかぶっ壊れてて、ゾンビビジネスで儲かった金を醜く獲り合ってたりするどうしょうもない一家ではあんねんけど、なんとも言えない愛嬌もあって、どっか憎めへんキャラクター連中やっていうとこもこの映画の逆にええとこ。

人間がゾンビをペット化にするっちゅう設定はそんなに珍しいもんやない。せやけど、本作のゾンビ第一号の青年が結構なイケメンっちゅうこともあってか、一家の末娘とのロマンスが生まれ、「ペット」としての存在から家族の一員化していくとこはちょっと新しいかもしれんわ。前半は突如村に出現したイケメンゾンビを軸に、どこかとぼけたオフビート系コメディが展開すんねんけど、中盤からはガラリと世界観を変えて、本格的なゾンビパニック映画へと移り変わっていくねん。この前半と後半の落差がこの映画の最大の特徴かもしれへんな。

それと、ゾンビ映画のオマージュやリスペクトが盛りだくさんなとこもこの映画のおもろさの一つや。わしが気づいただけでも、ジョージ・A・ロメロの「ゾンビ」や最近の韓国での大ヒット作「新感染 ファイナル・エクスプレス」はもちろん、「ウォーム・ボディーズ」「ショーン・オブ・ザ・デッド」「ランド・オブ・ザ・デッド」「死霊のえじき」「ドーン・オブ・ザ・デッド」「バタリアン2」くらいは気づいたけど、他にももっとあんのとちゃうかな。もし本作がシリアスなゾンビもんやったとしたら、「これどっかで観たな、ちょっとやり(パクリ?)過ぎやろ」となるけど、なんせコメディやさかい、楽しいし笑えるさかい全然許せるわ。この監督のゾンビ映画愛が凄いわ。正直参った。

わしのいっちゃんのお気に入りのシーンは、兄弟がイケメンゾンビの服着てゾンビの群れに飛び込んでいくシーン。これって「ショーン・オブ・ザ・デッド」やんか。演技の上手い俳優二人が、ゾンビの群れの中で、ゾンビへの成りすましが超下手くそっちゅうんが笑えたわ。

作品全体としては、田舎の過疎化と高齢化、格差拡大っちゅう韓国の社会問題(日本も同じや)を背景にしつつも、ゾンビ映画のオマージュやらリスペクト(パクリ?)を思いっきりぶち込んで、最終的には壊れた家族の再生のヒューマンドラマに着地させるっちゅう、実はめっちゃ難しいことをやってる作品やわ。作品のとしての出来はちょっと置いといたにしてもや。これって監督デビュー作?って、なかなか力量あんな。韓国映画界にはほんまビビるわ。

ラストやけど、「あー、これ完全に新感染やん」と思わせといて、「新感染」へのまさかの意趣返し。中々やってくれるやん。オチはネタバレなるさかい言われへんけど、ああ、この手があったかと。「どや!」的など真ん中の伏線回収。正統派のゾンビファンには不満かもしれんけど、たまにはみんながハッピーになるゾンビ映画もええんとちゃうの?そんな感じやな。
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