タキ

燃えよ剣のタキのレビュー・感想・評価

燃えよ剣(2021年製作の映画)
3.8
土方歳三の昔語りのテイで日野のバラガキ時代から始まり五稜郭で亡くなるまでハイスピードで狂ったように爆走するのを振り落とされないようにしがみついてたら2時間半たってた。ワンシーンしかでてこない重要人物あり、隊士の妻たちの会話だけで話を進めるなど力技も数々あれどこのスピード感は嫌いじゃない。表と裏が一瞬で入れ替わる混沌とした時代背景や土方の短く太い生き方とテンポが似ている。
天下国家のことは頭に無く、ひとことも攘夷思想を語らず、新選組を天下一の組織にすることだけを目標とする土方のその「私」を捨てた冷徹ぶりは今で言うと近藤をカリスマとしていただき自分はNo.2で影で采配を奮う起業家や経営者と言った方が近いかも知れない。組織の存続を第一に考え切れるものは切る。クビという意味ではなく物理的に切って捨てるのだからヒリヒリ感がスゴイ。芹沢を自ら粛清しておきながら他人にその罪をなすりつけ、名実ともに新撰組を掌握するシーンはシビれた。このノワールを包み隠さず描くことで土方歳三の新撰組がより鮮烈に漆黒の闇をまとい輝くのだ。血生臭い野郎どもの中で掃き溜めに鶴のような存在感を放つ沖田総司を山田涼介が演じ、彼の姿を見るたびに深く呼吸ができるような気がした。彼が出演するドラマや映画を見るたびにこの美貌をいつかうまく使える日が来るといいなと思っていたが今回はドンピシャでハマっている。可愛がってくれていた芹沢を切ることに「仕事だから」とあっさり同意するところが酷薄な天使みたいで1番好きだった。
あと意外なキャスティング、ウーマンラッシュアワーの村本さんもよかった。ただでさえハイスピードで進む物語の中でさらに早口で喋りまくるというエッジ尖りまくりの演出が面白すぎる。
岡田准一の土方は完璧に息苦しいほどに作り込まれていた。彼がデザインした殺陣は暗いシーンが多い上にハイスピードで動体視力が衰えた身としては目が少々疲れたが、骨が折れる音が聞こえるような重量感がよいと思った。
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