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フォードvsフェラーリのHrtのレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
4.0
業種は違えどエンジニアの端くれとしてフェラーリの精神に心から敬服する。
企業理念に基づく行動を双方の重役がしているのは間違いないがそれと門外漢が耐久レースの場まで横槍を入れてくることは切り離すべきだと憤り混じりに本気で思ってしまった。
実際、耐久レースに注力してきたエンジニア出身のエンツォ・フェラーリはヘリコプターで夕食へ出かけたヘンリー・フォードⅡ世とは違い最後までレースを見届けた。
そして事実上の優勝を果たした相手へ向けて敬意を表明した。
そうしたエンジニアの理想的な倫理観を目にして涙腺が緩んだ。
シェルビーとマイルズはあの瞬間、喜び合うフォード関係者たちではなくフェラーリと共振していた気がした。

車の水平運動を様々なアングルで捉える撮影の爽快感。
グレタ・トゥンベリが環境破壊による気候変動問題を国連でスピーチしたことが世界的ニュースに取り上げられるこの時代にガソリン車を何十台と廃車にする完全に逆行した映像。
しかしやはりかっこいいものはかっこいい。
この規模でなければこのような傑作は生み出されなかった。

「車に懸けた男たちの夢」というこれもまたこのご時世とは遠く離れた価値観。
だとしてもこの作品はロマンチックなのだ。
カウボーイどもが馬を車に替えて爆走する。
(ドライバー・マイルズはイングリッシュだが)アメリカ栄光の歴史を追体験する意味でもとてもウェスタンな一作だった。
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