10円様

DUNE/デューン 砂の惑星の10円様のレビュー・感想・評価

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)
3.7
 学芸会みたいな演技と素人が作ったようなCG、詰め込みすぎて逆に単調になったデヴィッドリンチ版の「砂の惑星」にげんなりしていたのと、個人的にあまり波長が合わないドゥニヴィルヌーヴ監督、それに加えてかなりの長尺と賛否両論の嵐という事で耐久戦に挑むつもりで期待値はかなり下げて観に行きました。
 結果、SF映画としてはあまり真新しさは感じませんでしたが、リンチ版と比較するとかなり良い仕上がりになっていたと思います。全体的に無機質な雰囲気や機械、空間の造形は「メッセージ」の流れから来たのだと思わせるし、緊張を煽るハンスジマーのスコアも良かったです。本作は序章という事であり、物語はゆっくり進みます。各派閥や惑星の設定が丁寧すぎるほど説明されているのですが、固有名詞が多いので予習は必須かと思われます。実際あれだけ説明されても理解できたのは半分くらいでした…

 序章とは言いましたが、別に○部作構成として製作されているわけではなく、本作が好評だったら続編作りますという方針だそうです。本作はコロナ対策で同時配信も行っていて、劇場の興行収入は初週で4100万ドル。ヴィルヌーヴ監督作としては大成功なのでしょうが、下半期の大作としてはかなり痛い数字です。続編着手には黄色信号と言ったところでしょうか…ただここまで大風呂敷を広げてなんの回収もないのも困りものですね。

 結果、全く期待していなかった本作の2時間30分は意外と退屈しませんでした。やはり30数年の時経て大進化をとげたCGとSF映画作りの基本、そして監督の娯楽性ではなく芸術性を出した作りが良かったのだと思います。
 リンチもヴィルヌーヴも決して娯楽性を重んじる職人気質の監督ではありません、二人に共通するのは作家性であり、リンチは柄にもなく娯楽に走ったのが大失敗だったと思います。スターウォーズから大きく変わり始めたSF映画の常套手段、これを踏襲しつつも自分の世界観に当てはめたヴィルヌーヴの作りは、現代のSF映画にとてもマッチしていると感じました。月が二つある惑星、大艦隊、整列する大軍団、砂虫、設定特有のマシーン(シールドとか保水スーツとか)全てを現代的に再構築してくれました。

 CGと共に期待していたのは役者陣で、どの役者もスタイリッシュに描かれていました。ティモシーやファーガソンは美の極みだし、ブローリンの誇らしげな軍人姿、スカルスガルドの怪しさ、リンチ版ではキャラがギャグ要素とも取られるほど世界観から逸脱していましたが、本作ではきちんと融合出来ていた印象がありました。
 そして皆さん大絶賛のモモアマンですが、ここまでカッコよく描かれているとは思いませんでした。強さと忠誠心、機転、礼儀、優しさが全て詰まっていて本作のベストキャラだったと思います。

 まあ、序章?前編?なのでこんな感じでも良いでしょう。続編では大きく化ける気がしないでもないです。単に数字を狙うのであればテコ入れの必要性は感じますが、(スターウォーズみたいに…)個人的にはこのままで行ってほしいなぁ〜その時はリンチ版で復習して……いや、もう決して観ることはないでしょう。
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