Arbuth

グレース・オブ・ゴッド 告発の時のArbuthのレビュー・感想・評価

4.8
カトリック教会の小児性愛スキャンダルをテーマに描いた作品、と言えばフィリップ・シーモア・ホフマンとメリル・ストリープの演技合戦が見応えのある名作「ダウト」を思い出す。
こちらも全くタイプは違うけど負けず劣らずの力作だった。

かつて少年時代にある神父から性的虐待を受けたおじさん達が、神父と教会に当時の責任を追及する訴えを起こす闘いと葛藤をドキュメンタリー的に描いた作品。元となる実話について恥ずかしながら全く知らなかった。現在進行形の事件をすぐに映画化し発表できるスピード感がすごい。

核となるのはアレクサンドル、フランソワ、エマニュエルの3人。
その神父が未だに少年達に聖書を教えていることを知ったことから、教会に問題提起をするがなかなか聞き入れてもらえない。
インターネットやテレビを通じて最初はか弱かった一人ひとりの小さな声が少しずつ輪を拡げ、次第に宗教界並びにフランス国中を動かす一大スキャンダルへと発展する。

これが実話に基づいているというのがなんとも気分の悪くなる話。被害は本当にそこかしこにあるんだろうな。。。

上記の3人を含め被害者は100人以上。
ショックで未だに過呼吸で倒れる人、信仰を捨ててしまった人、歪んだ性的コンプレックスが生じてしまった人、自殺してしまった人、、、計り知れない被害の大きさ。

教会や人気の神父を訴えることで近所との軋轢を生むことや、世間から好奇や非難の目に晒されることを恐れて声を上げられない被害者も多数いる。

30年も経ったのに何故今更?辛いのはお前だけじゃない、教会を訴えるなんて恥さらしめ、などと親兄弟にも苦痛を理解されない人達が観ていて辛かった。

フランスにおける教会の地位とか存在感とか重要度などの知識が無いから教会を訴えることの難しさ、信仰を捨てることの重大さをいまいち理解できなかった。

本当に観ていて何度も胸が締め付けられるし、繰り返し観たくなる作品ではない。だけど観て本当に良かった。

ラスト3秒で流れるテロップの衝撃がすごい。そうなんだ。。。そんな終わり方あり?
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