ジーハ

グレース・オブ・ゴッド 告発の時のジーハのレビュー・感想・評価

3.5
バチカンで実際に起こった性的虐待事件を基に
した作品。

同じ題材だったアメリカの「スポットライト」は
事件の真相を暴いていく展開だったけど、
この作品はスキャンダルな事件に、じゃなく、
被害者家族たちのデリケートな心情に焦点を
あてて描かれていた。


虐待を受けた後の本人とその家族。

劇的な事件が起こるわけじゃなく、
声を上げた被害者たちの活動と事件の
経過が並行に淡々と進んでいく。

虐待した神父は罪を序盤から全て認める展
開だった。優しくて説法もうまく人気も
あった人。

幼い少年が好き…
自分の性的嗜好性が社会と全く噛み合って
いなかった。。神父自身もやってはいけな
い行為と自覚しつつも、何十年も後に告訴
されるまで彼はその行為をやめなかった。
でも彼の心情は「誰も止めてくれなかった
…」と言わんばかりのようにも感じた。

性別、年齢問わず…人を愛することは自由
だと思う。でも相手と共有できない自身の
感情を立場を利用して相手に押しつけてい
た神父は絶対に許せない。

幼い時に受けた傷は身体以上に心に深く
刻まれ生涯消えることはないし、
それをほぼ容認していたようなバチカン。
教会と自身の保身。。…身勝手で強欲な
政治家と変わらなかった。

あと、被害者たちの訴えの活動や感覚にも
ズレがあり、その考えや行動の中には共鳴
できかねる違和感を持った人もいた。
飛行機飛ばしてデモをアピールするとか?
(お国柄や人種の違いかな?)

神(教会)が怖くて子供を守れない
神より家族を疑う。
神ってなんだ?教会も神父も
神様じゃなく人間なのに、、、

信じて心を救ってくれる宗教って
こんな時は逆に恐い。
答えのないまま、人間を不安や
不信感の中に閉じ込めてしまう。

…何を信仰しているわけじゃない、
無宗教に近い自分にとってはいつも
気分が澱んだまま終わるんですよ。。
このタイプの作品はスッキリしない
ことが多い。

そんな傷ついた心を癒し支えになってくれていたのは、法律でもバチカンの謝罪でもなかった。
自分を信じてずっも側にいてくれた家族。
それぞれの家族の絆が共通してちゃんと描かれ
ていたと思います。
ジーハ

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