あでぃくしょんBBA

赤い闇 スターリンの冷たい大地でのあでぃくしょんBBAのネタバレレビュー・内容・結末

3.3

このレビューはネタバレを含みます

2022.05.11 配信で視聴

1930年代に、スターリンの農業政策の失敗と隠ぺいを調査・報道した記者が主人公。
ゴルバチョフが掲げたグラスノチ(情報公開)方針のはるか以前に、リアルタイムでウクライナに潜入し、“成功したソヴィエト”の闇を暴いた記者がいたとは知らなんだ。
主人公、ギャレス・ジョーンズは実在した人物。
ソヴィエト報道に関して主人公と対立した、ピューリッツァ賞受賞のニューヨークタイムズ記者、ウォルター・デュランティも実在した人物。
実話を基にした映画は、知らなかったことを知れるから嬉しい。

とはいえ。
中途半端にエンターテインメントな部分を差しはさんだために、いささかフィクション性を強めてしまったように思う。
何かっつーと、アレだ、スターリン翼賛側についていた女性記者とのロマンス、別離。
有用な情報(や利益)を引き出すためにターゲットを定めてカチコミかけるのは、熾烈な職業人世界では当たり前っちゃ当たり前なことなんだけど、映画ではそのやり方が強引。
自分にとっては職業的に持ちつ持たれつの友人であり、彼女にとっては恋人的な存在だった男が暗殺され、その衝撃が癒える間もなく、彼女に(結果的に)押しかけ間男?しちゃった主人公。
そこを観ながら、私ゃ昔読んだ、“ピューリタン社会で清教徒教育を受けたアメリカの若者が、第一次大戦でヨーロッパに派兵されてヨーロッパ兵士たちの性の放埓に強い影響を受けた”って一節を思い出してしまったよ。
ちょっとね、取ってつけたロマンスというか、そのせいで映画全体の印象を“つくりもの”くさく感じてしまった。

あと、これは字幕の日本語訳のせいなのか、ソヴィエトの実態を報告する際に実際にギャレス・ジョーンズが発した言葉なのかわからないが、「平等主義は間違っている」と批判したセリフが気になった。
スターリン体制は“平等主義社会”などではない。“平等主義”“共産主義”という言葉(概念)で“平等で誰もが満たされる労働者天国”というファンタジーをふりまき、“無謬で前衛なわれわれ”に異を唱える者は抹殺していった暗黒独裁社会である。
概念や理想に罪はない(ただのコトバだから)。それを使う人間に悪業や罪が生じる。組織化し、組織の権力を拡大しつつ絶対権力と堅牢性を求めればなおさら概念や理想から遠ざかる。宗教も政治も、同じだね。
あでぃくしょんBBA

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