Sachika

ニューヨーク 親切なロシア料理店のSachikaのレビュー・感想・評価

3.5
誰かの親切が誰かに繋がり、それが輪になって誰かの支えになる。
見知らぬ人にも手を差し伸べてくれるNYの人々。
父親のDVから逃げ出し、大都会で怯えていた親子は、人の優しさに触れ、新しい人生の一歩を踏み出す。
観た後はきっと誰かに親切にしたくなるんじゃないかな。


とりあえずキャビア以外のロシア料理の絵が欲しかった笑
原題のままでよかったのでは?ってくらい、親切なのはロシア料理店の人だけではなく、ニューヨークで暮らす人々。
そしてロシア料理店の常連客のアリスを中心に、人々は助け合い、赦しあい、生き方を見出していく。
ロシア料理店はあくまでも安全基地みたいな存在かなあ。

自分は1人じゃないんだな、と思わせてくれる。
自分の何気ない行動が、明日、誰かの支えになっているかもしれない。そう思うとこの優しい世界で、もう少しだけ頑張ってみようと思える。
ただ同時に、それに甘えるだけの人間は優しくされる価値なんてある?とも思ってしまった。
わたしはどうもこの母親が好きになれない。

すごく素敵な映画だったのに、私はどうしても母親のクララに共感が出来なかった。
働きもせず、万引きや置き引き、無銭飲食を繰り返す母親。
必死になるあまり目の前しか見えず、子どもから目を離し、疲れ果て、また目を離す。
親切なニューヨークの人々に甘え、たとえ親切にされたとしても愛想がなく、子どもたちを守るためとはいえ、ホームレスを威嚇し、見下す。
暴力的な夫から身を隠す為とはいえ、お礼も言わずに突如消息を絶つ。
そして途中からロシア料理店のオーナー・マークといい感じになり、最終的に、なぜか綺麗な格好をして、ひとりで彼に会いに行く。

母になったことのない私にはこの子供を守るための必死さがわからないのだけど、母親以前に人間として最悪にしか思えなかった。
それでも息子たちは、母の行動から自分たちへの愛情を受け取り、行動を赦す。
パンフレットのコラムに「赦し」の映画だと書かれていたけど、親切な人々が身勝手な一家に巻き込まれる話に感じてしまい。。
残念。
とりあえずクララはアリスの爪の垢を煎じて5リットルくらい飲んでから出直してほしい。

とは言え、アリスやジェフ、その他の人たちは、心があったかくて好きだなあ。
単純にケイレブ・ランドリー・ジョーンズのファンということもあるけど、不器用に生きているジェフが、アリスと出会ったことで社会に適合していく様子はよかった。
誰にでも得意不得意はある。
それをただ、「こいつは何もできないんだ」と責めるのではなく、出来る方へと導いてく。
それが本当の親切だなあと感じました。
Sachika

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