Hideko

ニューヨーク 親切なロシア料理店のHidekoのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

原題: The Kindness of Strangers

本作、邦題から、様々な事情を抱えた人々が温かい美味しいロシア料理に癒され、優しい人たちに助けられるお話?と思いきや少々違っていました。

監督のロネ・シェルフィグはデンマーク出身の監督で、生粋のニューヨーカーではないが為かプロットにいくつか疑問点が見受けられました。

・夫の、妻と2人の幼い息子へのDVがあれほど酷いものならば、シェルターやそれに類する施設に駆け込むという手があるのではないか?しかし、子どもたちが都会(マンハッタン)を見たい!という強い希望を持っていたのでシェルターに入ったらその希望が叶えられないため早朝の家出となったと納得することもできますが。

・万引きシーン。そう簡単にマンハッタンの高級店で万引き出来ませんよね。

・下の子が教会の庭で凍死しかけた件。古い教会でドアが自動ロックであったとは考えられず、何故締め出されたのか?守衛がいたのかな?そうとは思いにくいけど。
などなど…。

こう言った点を挙げていけば枚挙にいとまがないのでこの辺にしておきます。

しかしそれら疑問点を忘れさせてくれる、自らも不幸や難解な問題を抱える人々の優しさが心に強く響きました。

ロシア料理店のピアノの下で寝ることになってしまった母子を、咎めるでもなくそっと食事を置いていくシーン。プロットの難に首をかしげていたにも関わらず、突然涙してしまいました。

原題ですが、Tenessee Williams(テネシー・ウィリアムズ)の戯曲 “A streetcar named desire” (『欲望という名の電車』)に出てくるセリフ “I have always depended on the kindness of strangers” (「私はいつも他人の親切に頼ってきた」)からの引用だそうです。(IMBb Triviaより)。この戯曲のことは知りませんでしたが大まかなのストーリーを読む限りは本作と重なる部分があるとは思えないので、本作のタイトルへの使用はあまり意味がないのかも知れないですね。

優れた邦題を付けるのは本作を鑑賞すると難しい作業だとつくづく思いますね。自分ならどんな邦題にするか…いつも考えるのですが、難しい。無難なのは英題をカタカナにしてしまう方法かと思いますが、日本人に馴染みのない英単語をカタカナにするわけにもいかないし意味不明になってしまっても困るし。

タイトルやポスターは、作品を選ぶ際の指標の一つですが、それに惑わされすぎると傑作・良作を逃すことにもなるのであくまで参考程度にしたいと。

本作を鑑賞して他人に対しても自分に対してもとても温かい気持ちになったので、プロット・邦題の件は忘れます 笑。
Hideko

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