ビートルズに魅せられた男が、一世一代のピンチとチャンスを手にするお話。
もしこの世に当たり前として存在していると認識していたものが、実は自分しか知らないものだったら。友人に聞いても、Googleに問いかけても、世界中で自分一人しか知らなかったら。…まあ普通にビビりますよね。一般のピープルである自分のために、こんなにも大規模なドッキリが行われているのか？おいおいふざけんじゃねえ、なんでペプシはあってコカ・コーラがないんだ。ビーチボーイズが存在していて、ビートルズがいないだ？
こうして始まった、なかなか芽の出ないシンガーソングライターのジャックの世にも奇妙な物語。
世にも奇妙な物語、なんですけども”ポップかつ爽やか”な風が終始吹き抜けています。海岸沿いの町で、スーパーマーケットの店員とシンガーソングライターの二足の草鞋を履くジャック。シンガーソングライターとはいえ、コンサート出演決定！！！と思えば、それは大型フェスの隅の隅に用意された小さなテント内であったりと、絶賛挫折寸前ピンチ状態お送り中。しかし、そんな中、12秒間という割と長めな世界規模停電をきっかけに”ある”チャンスを手にします。その結果、エドシーランと肩を並べるほどのビッグスターとなった彼。
けどまあ、人生そう簡単には歩ませてくれないもの。「果たしてこのチャンスを飲み込み、自分の血と骨にして良いのだろうか。」不意に訪れたチャンスに、疑問を抱き葛藤するジャックの姿は、理性と情念の間で揺れ動く私たち人間の日常の姿。世にも奇妙な物語でありながら、とても現実的なキーワードが根底にあります。ファンタジーとリアルが柔軟に絡み合う、そう簡単にふわふわさせてくれない、ポップコメディーファンタジー作品でした。
「ビートルズのライブに行けた親父マジで羨ましいわ…どんなんなわけ？ビートルズのライブって」
「夢なんぞもう見ちゃいけないよね。現実に生きていくか…」
「夢を手にして成功したけど、本当の幸せってなんだったっけ」
「愛を伝えたいけど今更恋人になりたいだなんて言えないよ…」
ジャックが体を張って、その答えを教えてくれます。
