にしやん

風をつかまえた少年のにしやんのレビュー・感想・評価

風をつかまえた少年(2019年製作の映画)
3.8
​​アフリカの最貧国の一つとされる国で、飢饉から家族や村人を救うため、独学で風力発電を開発したという少年の、ノンフィクション小説を原作にした、実話に基づく話や。本作は、2001年大旱魃で史上最悪の大飢饉に陥ったマラウイ共和国が舞台や。タイトルからストーリーが読めるねんけど、そこまでの過程を事実に沿って、住人等が直面した困難を大変リアルに描写してて、最後まで引き込まれたな。

​​そこには一人の少年が風力発電を起こすに至った理由の生活の困窮の背景と経緯、立ちはだかる数々の障害が丁寧に説明されてるな。企業による森林伐採、政治の腐敗、教育への偏見や無理解、アメリカで起きた9.11同時多発テロに至るまで、それら数々の問題がアフリカの最貧国のとある村の日常生活にどんな影響を与えてるんかについてが、大変分かりやすかったかな。マラウイのような最貧国がどんな状況にあるんか、日本人の殆どが知らん。絶対的貧困​や飢え​が人間にどのような影響を及ぼすのか、生きるか死ぬかの状況で、人間はどのような心理状態になるのかという点にも焦点​が当てられてる。

正直わし今回、本作でこの話を初めて知って、衝撃を覚えたわ。驚くことに彼は当時まだ14歳で、それも独学で風力発電機作ったんやから。国民70%が飢餓状態に陥る大旱魃の中、理科好きの少年が年80ドルの学費を払えず退学処分を受け図書館で独り本で学び続けるんや。それも皆から白い目で見られてるんにも関わらずやで。その後、村民が次々に命を落とし、飼ってる犬まで餓死した時に、14才の少年は「風で発電し雨を降らせる」ことを決意して、オヤジを説得すんねんけど、オヤジは頑として息子の話を聞かへん。そんなオヤジを今度はオカンが説得すんねんけど、その言葉と涙に胸が締め付けられそうになったな。わしがこの映画でいっちゃ好きなシーンや。

この映画が教えてくれてるんは学ぶということの真の意味や。ほんで、わし等みたいに学ぼうとしたらいつでも学べる環境にあることがいかに恵まれているかっちゅうこと。たとえほんのわずかな期間でも学校に行かせてくれた父に感謝する少年の言葉に胸を突かれる。何がほんまに人生を豊かにすんのか、改めて考えさせられるわ。ラスト10分は感動で泣きの涙や。結論が分かってたかて、自ずと涙が溢れてくるわ。

ただ一つだけ残念やったんは、少年が実際に風力発電の機械を作ってるとこの話がざっくりしすぎてたとこかな。試行錯誤を重ねて苦労してやっとできたっていう感じが全く無いんがアカンのとちゃうかな。これがあったら映画的には言うことなかったのに。ここだけほんまに惜しいわ。

その後、彼は奨学金を得て学校に復帰し、南アフリカの大学に進み、遂にはアメリカのアイビーリーグの一つダートマスに入学すんねん。2013年のタイム誌の「世界を変える30人」に選出や。こんなエラい人、周りが放っとかへんわな。世の中捨てたもんやないわ。

この映画は、今現在貧しい国で貧困、飢えに苦しむ人等に夢と希望を与える素晴らしい作品や。せやけど、そういう人等が映画を観られる状態やないっちゅうんが、最大の矛盾かもしれんけど。そういう話はあるにしても、とにかくこれからも世界中の色んなところで貧困や困難にめげず、夢や希望を実現し、貧しい人々を救う第二、第三のウィリアム少年が出て来てほしいわ。それにしても、どこもかしこも政治や行政はいったい何をやってんのや。まったく。
にしやん

にしやん