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転がるビー玉のHrtのレビュー・感想・評価

転がるビー玉(2019年製作の映画)
3.5
東京で大学生以外の二十歳なんてツラいだけだろう。
思わず主語のデカい毒づき方をしてしまったがこの映画には確かに夢を見ること、そして社会で生きることの空虚さをどこか感じる。
自分に空いた穴を埋めるように肩を寄せ合い暮らす3人。
それ故に3人でいる部屋のバイブスは良いものが出てた。
散り散りになって東京でチャレンジする彼女たちの心細さもコントラストで色濃く映る。
この手のストーリーは別に珍しくもなにもないが、NYLON JAPANの企画ということで編集部や3人の部屋の装飾には雑誌のカラーが反映されている。
ので就職者が1/3という状況にもかかわらず部屋のあのムードはリアリティに欠ける。
飾られたBECKのアナログレコード、誰の趣味なんだろう?とか。

キャストは主演の3人とも良かったが萩原みのりは特筆すべきだと思った。
彼女が演じる瑞穂はあの中で就職しているが故に一番社会への疎外感を感じているし、その反動としての行動にも痛みがついて回っているのが分かる。
欠けたビー玉を家に持ち帰ったのも彼女であることが証明している。
居酒屋で泣き出すシーンは本作のベストと言ってもいい。

若干構成に弱さを感じたものの楽しめるポイントがあることは事実。
包み込む佐藤千亜妃の音楽も、登場人物の気持ちを代弁する主題歌も素晴らしかった。
部屋を引き払った後のことは何一つ言及されなかった。
人生がそれで終わらないのと同じように彼女たちと街との関わりも続いていくだろう。
刹那的でも気持ちを共有できるカットで終わりを告げたことで救われた思いもあった。
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