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SKIN 短編のdm10foreverのレビュー・感想・評価

SKIN 短編(2018年製作の映画)
4.1
【深淵】

ここ数日、一気にレビューの数が増えた今作。
昨今のコロナ災禍に伴う「おうちシネマ」の一環で、皆さんまた新しいショートムービーを見つけたのかな?などと勝手に思っておりましたが・・・。
皆さんの熱量の高いレビューを拝見するにつれ「なんだなんだ?」となりまして。期限ギリギリでやっと観れました。

怖い。
少なくともこの20分あまり中に笑える要素なんて一個もありゃしない。
だけど、目を背けてはいけない。というより目が離せないまま(え~~~~っ!)で終わる。

(今だからこそ観るべき映画)

確かにそうなのかもしれない。
今まさに現在進行形のアメリカで業火の如く燃え上がる「黒人差別」に対する抗議運動。
時を同じくして「新型コロナウイルス」の影響で、我々は「ソーシャルディスタンス」を取ることが必要になった。

更に広がる「距離」。

だからこそ、物事の深淵に気付くべき時なのかもしれない。
「深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いている」
100年以上前にニーチェが残した言葉。
白人も黒人も関係なく、一人の人間が個々に持つ「心の深部」。

何か事が大きくなった時に色々と騒ぐのではなく、冷静に判断できるときこそ自身の深淵を覗くことができるのではないか、そしてその奥に潜むものと対峙できるのではないか。
そこから始めない限り、表面的な争いは絶対に無くならない。
だから「別に今じゃなくたってよかった。こんな暴動がきっかけで観るのは辛すぎる」って気にもなる。

そして、何より「たった20分」で絶望的なループの一端を見せられたあとで、本編の行く末がどっちに転んでも恐ろしい。

はやく続きが観たい・・・・・いや、観たくない・・・・。
絶対に気持ちが晴れることなんてあり得ないのは分かっているけど、この結末は見届けないといけない気がしている。




『怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。』
~フリードリヒ・ニーチェ著 『善悪の彼岸』146節~
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