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トールキン 旅のはじまりのmiumiuのレビュー・感想・評価

トールキン 旅のはじまり(2019年製作の映画)
4.2
『ホビット』『指輪物語』の作者J・R・R・トールキンの若き日を描いた作品。

作家モノは好きで大体ハマる、指輪物語の執筆背景とかかな? と思って映画館で鑑賞。
実際は作家の伝記映画というより、学友として出会った親友たちとの日々、初恋の相手との恋の行く末を描く青春映画で友情もの。

これは青春映画の傑作だと思う。
学生生活や戦争を背景にした友情が泣ける…。
第一次世界大戦が背景にあり、ある意味反戦映画とも言える。
役者も衣装もさりげない音楽も、とにかく美しい映画だった。



少年時代に両親を亡くし孤児となったトールキン。
生前に母が教育面を神父に託し、裕福な女性宅に下宿を許されたおかげで、無事進学を果たす。

進学先で出会った友人たちと、「芸術の力で世界を変えよう!」と秘密クラブ〈T.C.B.S〉を結成。大学に進み学び舎が分かれてもなお続く友情が眩しい。

親友グループの芸術における得意分野が絵、音楽、文学などバラバラなのが面白い。
トールキンの得意分野は古典… と言いつつ古典文学というより語学。自分で言語を作ってしまうのスゴイ。
語学関連でトールキン役ニコラス・ホルトと教授役デレク・ジャコビがやりとりしている場面、文系語学好きの身には見応えあった。
金銭的には恵まれない生活の中、空想の世界での物語作りや絵に楽しみを見出し、それが後の学問に繋がっていく。


ヒロインのリリー・コリンズ、ひさしぶりに出演作を見られて嬉しい。
トールキンと同じく孤児で、下宿先で出会うエディス役。
描かれるのは恋愛だけれど、当時の男女の教育の違いなんかも垣間見えて考えさせられる。

前半で眩しい友情が描かれるだけに、芸術に夢を抱いていた若者たちが戦争に向かう展開がとにかく悲しい…
(映画館内でもあちらこちらからすすり泣きが聞こえた)
最近観た『天国でまた会おう』も戦争と芸術を扱っていた、やはり芸術や文化と戦乱は対局にあるのかな。
戦争は美しいものを次々と破壊する。
そして芸術や文化を疎かにすると殺伐とした世になる。
ということを改めて実感させられた。
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