miumiu

デューン 砂の惑星PART2のmiumiuのレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
4.2
「映画館で観て良かった!」に尽きる。

原作小説未読、デヴィッド・リンチ版の過去作も未鑑賞。
1作目は好きな俳優が大勢出演していて満足だったけれど、設定を追うのに精一杯だったのと、終始シリアスなのに長くて疲れた… というのが本音。
そして最近ティモシー・シャラメに思うところがあって出演作を心から楽しめなくなったので、今作も時間が合わなかったらスルーしていたかも。
結果、映画館だからこそ映えるスペクタクル感のある映像、ハンス・ジマーが手掛けた音響効果と一体化してるかのような音楽を味わえて、映画館で観てこそ良さがわかるシリーズだと改めて実感できた。
展開にも起伏があり、飽きずに楽しめた。


前作で父を喪い敵に追われる身となった主人公ポールと母が、砂漠で暮らす民に匿ってもらいつつ救世主として認められ、敵との戦争に身を投じていく… というのがPart2の主な展開。

前作ほどティモシー・シャラメの顔面ありきの作りではなく、前作ではちょっとしか登場しなかったゼンデイヤがやっとメインキャストとして活躍。
敵役のオースティン・バトラーも、ご本人か分からないくらいの特殊メイクをしつつ演技は素晴らしかった… ので、前述の「ティモシー・シャラメの出演作、もう楽しめないかも…」という心配は杞憂だった。

そして鑑賞中にモヤモヤしたのは、原作ありきのSFとは言え現実を落とし込んでいるだろうから、「砂漠の民のもとに伝説の救世主が現れる」という物語の構造が、戦争の多い今の時代に見るととてもグロテスクに見えること…
原作だとどれだけ自覚的に描写してるのかな…
砂漠の民=現実世界だと中東やアフリカにあたると思うので、そこに白人の主人公が現れ、本人の覚悟のないまま救世主として祭り上げられていく様子を見るのは正直モヤッとした。
ポールは救世主になることを望んでいるわけではないのに、母レディ・ジェシカからすると、生き延びるためには信仰の力を借りるのが一番なわけで。
信仰&宗教という一見ピュアに見えるものが、政治や戦争と結びついたときの恐ろしさを目の当たりにしたような気分… 鑑賞中にとてもとても考えさせられたしゾワッとした。
宗教と政治・戦争が結びつくことの恐ろしさを描いているのは、あえて狙っているんだろうな… と思いつつ、かなり前に出版された原作ではどうなっているのか気になる。

世界的にも好評っぽい? から3作目もきっと作られるんだろうな。
ポールが青春期を抜けて、良くも悪くも大人になったのが今作。
次はどんな展開と迫力の映像を見せてくれるのか、楽しみ。


(追記)余談だけど、原作を知らないままシリアスな異世界SFを観るのは、子供の頃に何度もナウシカを観て、理解しきれないまま馴染んでいった体験を思い出した。
miumiu

miumiu