ギャス

シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢のギャスのレビュー・感想・評価

3.3

自然の風景が素晴らしい。
冒頭のアンコールワットの写真葉書が印象的。
有名なあの建築の裏側にこんな人間像が見えてこようとは予想外だった。
ラストシーンの美しさにたどり着いたとき、見ている私も遠い旅をしたような気持ちになった。


ネタバレ
1日に32キロをひとり歩く毎日。
散歩しているとわかるが、その間は取り止めもなく常に何かを考えているものだ。
のちに妻になる人からの「何を考えているの?」という問いは深い。
10時間とも言われたその時間の中で、彼は自然と対話し学び、頭の中で何かを確実に形にしていた。

人嫌いで偏屈である彼は、今で言うアスペルガー的な性質だったと思われるが、だからこそあの宮殿はアールブリュット的に彼の思うまま、まずは作り上げられたのだろう。
そして、彼を理解し愛した妻と人生を慈しむことができ、娘という愛する者ができて、彼の思うままに作っていた情熱は"誰かのために"という新たな目的を得て更に熱を帯びた。
そこからまた更に宮殿作りにのめり込む悲劇もあったが、それも全て塗り込めたような壮大な宮殿の全景シーンは圧巻だった。が、そのあとのラストシーンの夢のような美しさはさらに感慨深く素晴らしかった。

不思議だったのは「終わりは見えている」という言葉。
どこまでやってもキリのないようなデザインなのだが、彼には"ここまでやれば完成"という姿が見えていたということなのだろうか。。
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