イホウジン

主戦場のイホウジンのレビュー・感想・評価

主戦場(2018年製作の映画)
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小さくも大きい慰安婦問題をテンポよく解説してくれる。まさに全日本人必見。

日本における排外的な雰囲気に違和感を感じた監督が、従軍慰安婦問題について第三者(日本にも韓国にも寄らない)の視点で向き合いながら、この問題の核心に迫っていく。日本の歴史修正主義者へのインタビューはやはり圧巻。彼らの主張の次にその主張の嘘を証明する文書やリベラル派のインタビューなどを紹介しており、手段は間接的でありながら、まさに歴史修正主義者を「叩きのめす」ことが遂に可能になった印象がする。そこまで徹底して否定しなければならない理由も映画の後半で説明される。そこに潜む巨悪に今日の日本の有権者は立ち向かう必要があるだろう。

この映画で深く実感するのは「この問題は本来よりシンプルに語られるべきだし、なんならここまで問題が肥大化している現状に疑問符を持たなければいけない」ということだ。映画が第三者によって作られたからこそ、この問題の核心が「人権侵害」であるということに今更ながら気付かされた。この視点を持てると、歴史修正主義者の主張の当事者の不在が残酷なまでに明るみになる。
映画では慰安婦問題と日本会議の動向との関連性への警告が終盤の重要な要素となる。ここまで視ると、もはや有権者である我々がこの問題を「知らない」ことは許されない気さえもする。我々が知らないことを逆手に取り、単純な感情論で煽りイメージだけの政治だけになってしまえば、権力者にとってこれ程都合の良い世界はないだろう。そんな腐った世界を望む者達にとっては確かに「大日本帝国憲法下で行われた人権侵害」ほど聞こえの悪いものはないだろう。それを覆い隠すかのように日本会議が進めているキャンペーンはあまりにも不気味だ。

この映画で「知った」我々が、「知ってほしくない」権力者にどう立ち向かうか試されている気もした。
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